平成28年度では、以下の研究成果が得られた。 1.未成熟鶏(10日齢)にエストロジェンを投与することで血中カルシウムおよびリン濃度が増加した。カルシウムの能動輸送を司るカルシウム結合タンパク質(CaBP D28k)遺伝子の発現量は空腸、回腸および盲腸において有意に増加し、リンの能動輸送を司るナトリウム/リン酸共輸送体(NaPi)サブタイプⅡb遺伝子の発現量も腸管において増加がみられた。また、血中の活性型ビタミンD3濃度もエストロジェン投与によって増加した。しかしながら、エストロジェン投与によりエストロジェンおよびビタミンD受容体遺伝子発現量は増加しなかった。 2. 通常飼料区の未成熟鶏(40日齢)において、エストロジェン投与により腸管ならびに腎臓でのカルシウムおよびリン吸収が増加した。通常飼料区とビタミンD欠乏飼料区の間でのエストロジェン作用について比較したところ、ビタミンD欠乏飼料区において血中活性型ビタミンD3濃度が有意に減少し、血中カルシウム濃度、腸管ならびに腎臓におけるCaBP D28kの発現量も減少した。しかし、血中リン濃度およびNaPi遺伝子の発現量は変化しなかった。 3. 産卵鶏にタモキシフェンを投与してエストロジェン受容体の働きを阻害すると、血中カルシウムおよびリン濃度が有意に減少し、腸管におけるCaBP D28k、腸管および腎臓におけるNaPi-Ⅱ遺伝子の発現量が有意に減少した。また、血中活性型ビタミンD3濃度も有意な減少がみられた。 以上の結果から、エストロジェンは活性型ビタミンDの生成を介してカルシウムならびにリン代謝を調節していることが示唆された。また、平成26-27年度の結果を合わせて考えると、産卵鶏では成熟に伴う卵胞からのエストロジェンの分泌により、活性型ビタミンD生成を介して腸管ならびに腎臓でのカルシウムおよびリン吸収が促進するものと推察される。
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