研究課題/領域番号 |
26450375
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
藤村 忍 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (20282999)
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研究分担者 |
門脇 基二 新潟大学, 自然科学系, 教授 (90126029)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 飼料 / 食肉 / 呈味向上 / 遺伝子発現 / メタボロミクス / アミノ酸代謝 / 筋肉 / タンパク質分解 |
研究実績の概要 |
良質タンパク質の供給源である食肉は、量的・効率的生産が求められる一方、TPPへの対応等も加わり高品質化が求められている。高品質化の中で呈味の向上に対する期待は大きいが、有効な情報は極めて不足してきた。申請者は飼料栄養素による高品質化を検討し、短期の特定アミノ酸量の調節による筋肉遊離グルタミン酸(Glu)量の増加と食味の向上の可能性を得た。この新たな栄養制御手法をさらなる高品質化に繋げるため、遺伝子発現、メタボローム等の解析により調節機構の詳細を明らかにし、食肉の価値向上を追求した。 1)飼料Lys量をNRC要求量の0.9、1.0、1.5Xに設定した飼料を10日間給与した筋肉試料のメタボローム解析から、低及び高Lys飼料により筋肉遊離Glu量は増加、低LysではGlu以外の遊離アミノ酸、有機酸の一部が増加した。筋肉LKR発現の解析からLys異化がGlu増加に関与すると推定したが、0.9XではLKRに変化が見られなかった。そこで筋肉タンパク質合成及び分解に関する主要酵素の遺伝子発現解析の結果、分解系のみが増加し、これがGlu及び他の遊離アミノ酸等の増加に関与したと推定した。2)低Lys飼料の10日間の給与で1)の効果が得られるものの増体量は減少した。経時的検討から短期間給与で増体に影響なく呈味物質が増加することを得た。3)高タンパク質飼料においてLysのみを要求量レベルとする相対的低リジンバランス条件により、10日間の給与で増体に影響させず呈味成分の増加が得られることを得た。4)機能性物質イミダゾールジペプチドの代謝においてCarのメチル化に関与するMetの影響を検討した結果、高Met飼料において筋肉Ans量の増加が示された。代謝酵素の遺伝子発現に影響は認められなかった。アミノ酸代謝に基づく解析により上記の成果が見出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
概要に示したように、各アミノ酸を特定レベルに設定した飼料を調製し、想定した効果を有するモデルを用いて、メタボロミクス、遺伝子発現解析等により比較解析を行い、代謝調節機構を検討し、多くの成果を得た。また各種解析手法を用いて生産性と食味を考慮した検討を行い、飼料アミノ酸についてより適切な条件を提案した。また当初計画以外のアミノ酸について新たな機能を見いだすことができた。
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今後の研究の推進方策 |
前年度までの成果を基礎とし、単一の飼料アミノ酸レベルの調節、またアミノ酸バランスの調節、さらには給与期間等の条件を考慮した筋肉グルタミン酸量の制御メカニズムの解明をメタボロミクス及び遺伝子発現解析等を用いて進めるとともに、効率的な食肉の食味向上のための条件を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
該当年度の本研究に関係するメタボローム解析の一部について、関連する筋肉のアミノ酸代謝の解析を目的とした他の研究経費で賄えたことから、次年度の使用額として留保することとした。メタボローム解析は非常に高額であることから、最終年度である次年度の筋肉組織のメタボローム、遺伝子発現等によるアミノ酸代謝の詳細な解析に充当することとした。
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次年度使用額の使用計画 |
筋肉の機能性成分において、主呈味成分であるGlu、また抗酸化性にも関与するIDPの代謝調節の検討において、次年度に飼料のLys、His、Met量、またアミノ酸バランスを段階的に変動させ、本研究の最も重要な点である筋肉組織のメタボローム、遺伝子発現等による解析に使用する。
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