研究課題/領域番号 |
26450376
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
鏡味 裕 信州大学, 学術研究院農学系, 教授 (80308303)
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研究分担者 |
小野 珠乙 信州大学, 学術研究院農学系, 教授 (10177264)
鈴木 俊介 信州大学, 学術研究院農学系, 助教 (30431951)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 幹細胞 / 発生分化 / 再生 / 細胞育種 / 家禽 |
研究実績の概要 |
主に、哺乳類(マウス・ヒト等)において、様々な組織・器官へと発生分化しうる能力を持った多能性幹細胞が樹立されてきた。各種の幹細胞においても、とりわけiPS細胞やES細胞の有用性が評価されている。これらの多能性幹細胞を用いて、様々な動物種(主にマウス・ヒト等)における、組織・器官・臓器の再生を誘導する研究が試みられている。 一方で、鳥類多能性幹細胞に関する研究も世界各国の研究機関において試みられている。しかし、鳥類における多能性幹細胞の樹立は今日においても成し遂げられていない。このため、鳥類多能性細胞に関する研究の重要性が強く認識されるに至った。そこで我々は先ず、ニワトリ各品種において、放卵直後の受精卵を採取し、この受精卵中で発生する初期胚から幹細胞様集団を厳密に分離する実験系の構築を試みた。また、得られた幹細胞の多分化能を、in vivo、及び、in vitroのアッセイで検証した。分離した鳥類多能性細胞においては、cvh、dazl、等の遺伝子が発生分化に伴って強く発現することが明らかとなった。鳥類多能性細胞における、これらの遺伝子制御機構は、哺乳類における多能性幹細胞の遺伝子制御機構に近似することを確認した。さらに、これらの鳥類多能性幹細胞をドナーとして、レシピエント胚盤葉に移植した。この結果、移植されたドナー細胞はキメラ個体内において、各種の組織・器官へ発生分化し得ることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度の研究において、家禽多能性幹細胞を厳密に分離する実験系を構築した。また、これらの幹細胞の発生分化における遺伝的特徴を把握することが可能となった。これらの遺伝子制御機構は、鳥類および哺乳類の相互で共通性が高いことも明らかになった。また、ドナー細胞を採取するため受精卵の採取が必要となるが、種鶏に給餌する飼料の成分を若干改変することで、産卵効率を改善し得ることが明らかとなった。これは、当初計画において予期していなかった成果である。よって本年度の成果は当初以上に進展したものと思われた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、ニワトリの幹細胞の一層厳密な単離方法の確立を試みる。多能性幹細胞の同定法には移植in vivoおよびin vitroでのアッセイを試みる。また、これらの解析を行なうことで幹細胞の同定をより精度の高いものとする。これらの基礎生物学的知見を統合的に利用する。多能性幹細胞を用いたキメラ個体の作出では、ドナーとレシピエントの識別や発生分化の解析が必要不可欠となる。このため、ニワトリにおける分子識別マーカー探索、および幹細制御遺伝子機能解析を推進する。こうして、一層解析精度の高い幹細胞遺伝子プロファイリングを行う。ニワトリ多能性幹細胞の発生分化を制御する遺伝子の網羅的解析によって、発生分化の本質を俯瞰する。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品の価格が研究開始当初の見積もりより安価で購入できたため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は、平成27年度請求額とあわせて、実験の消耗品費として使用する。
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