研究課題/領域番号 |
26450378
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
八代田 真人 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (30324289)
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研究分担者 |
中野 美和 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産草地研究所 草地管理研究領域, 研究員 (30547716)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 低質粗飼料 / 反芻動物 |
研究実績の概要 |
地球温暖化の進行に伴い寒地型牧草の不適作地が拡大している。このため,今後の反芻家畜生産においては暖地型牧草のような質の低い粗飼料(低質粗飼料)を効果的に利用した技術を確立しておくことが重要である。低質粗飼料の問題は,家畜による摂取量,消化率および代謝率が低いことである。しかし,育成期の早い段階から低質粗飼料を摂取した個体は,その後の低質粗飼料の摂取量や消化率が高いと報告されている。この結果は,発育期からの栄養環境が,消化および代謝機構の変化をもたらす可能性を示唆している。そこで本課題では,4ヵ月齢のめん羊を,低質粗飼料(スーダングラス)を給与する群(低質粗飼料群)および標準的な粗飼料(チモシー)を給与する対照群に振り分け,各飼料により4ヵ月間飼育し,その後,両群とも低質粗飼料を2ヵ月間給与することで,低質粗飼料に対する摂取量,消化率および窒素出納への適応が認められるかを明らかにしようとした。 その結果,試験開始から2ヵ月後の飼料摂取量は対照群に比べて低質粗飼料群が低かったが,4ヵ月後では両群の飼料摂取量に差は認められなかった。また,両群とも低質粗飼料を給与した6ヵ月後でも飼料摂取量に差は認められなかった。飼料消化率は,試験期間を通して両群に差はなかった。窒素蓄積量および尿中窒素量は,試験開始から2および4ヵ月後のいずれでも対処群に比べ低質粗飼料群で低かったが,6ヵ月後では低質粗飼料群の方が窒素蓄積が高くなる傾向があった。血清中の尿素窒素および尿素サイクルにおける酵素活性(カルバモイルリン酸シンテンターゼ,オルニチントランスカルバミラーゼ)には,両群に差は認められなかった。また,増体量は試験期間を通して両群に差は認められなかった。以上から,4ヵ月齢から低質粗飼料を給与することにより,飼料摂取量は改善することが示唆されたが,消化率および窒素代謝には明確な効果が認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り,離乳後のめん羊を用いて,低質粗飼料(スーダングラス)を給与する群(低質粗飼料群)および標準的な粗飼料(チモシー)を給与する対照群に振り分け,実験を実施した。その結果から,4ヵ月齢から低質粗飼料を給与することにより,飼料摂取量は改善することが示唆されたが,一方,消化率および窒素代謝には明確な効果が認められなかった。この原因については,低質粗飼料の給与開始時期,ならびに給与した粗飼料間の質的な差が影響していたと考えられたため,次年度の研究において,方法を改善し取り組む予定である。 反芻胃内の菌叢解析については,サンプルを採取し現在解析中である。これについては,次年度中に結果およびその効果を報告する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り,研究2年目においては反芻動物の代謝機能のうち糖および窒素代謝の変化に注目する。また,1年目で明確にならなかった消化率および窒素蓄積についても改めて検討する。基本的な試験設計は1年目と同じとする。すなわち,低質粗飼料群と標準粗飼料群(対照群)を設け,離乳直後(2ヵ月齢)より各飼料により4ヵ月間飼育し(経験期),その後,両群とも低質粗飼料で4ヵ月間飼育する。 試験開始から2ヵ月毎に飼料摂取量,消化率および窒素出納を測定する。また,2ヵ月ごとに採血し,経験期と試験期に各1回生肝バイオプシーで肝臓を採取して,以下の項目について比較する: 1)主要代謝産物濃度および代謝関連ホルモンおよび酵素の活性:血液については糖や窒素代謝に関わる代謝産物(グルコース,尿素窒素など)および糖代謝に関連するホルモン(IGF-1,T3およびT4)を測定する。また,肝臓において反芻動物の糖代謝に重要な糖新生を律速する酵素(PC,PEPCK)の活性および窒素代謝に重要な尿素サイクル酵素(CPS,OTC,ASS)の活性を測定する。 2)メタボロミクスによる糖代謝の網羅的解析:採取した肝臓を用いて,経験期に1回,試験期に1回,メタボロミクスの手法を用いて糖代謝の網羅的解析を行う。 これらの結果から,育成期から低質粗飼料を経験させると,低質粗飼料を効率的に利用できるように代謝酵素などの活性が変化するのか,変化があるとすればどの酵素や代謝産物が関与しているのかを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究成果発表に関わる旅費に関して,当初計画よりも経費軽減をできたことが,次年度使用額が生じた理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度における成果発表のため旅費もしくは,研究成果発表用の費用として利用する。
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