ニワトリにおいて始原生殖細胞(primordial germ cells:PGCs)の移植により生殖腺系列キメラ鶏が作出されている。ドナー胚とレシピエント胚が異性の場合(異性胚間移植)にレシピエント胚の生殖腺に卵精巣様の異常が約30%の割合で生じている。そこで、白色レグホンジュリア系の受精卵を37.5°C、湿度60-70%の条件下でstage12-15まで孵卵を行なった。ドナー胚からガラスマイクロピペットを用いて、胚周縁静脈より血液(含PGCs)を採取した。レシピエント胚は同stageまで孵卵を行ない卵殻に直径1cmの窓を開け、窓を介して胚周縁静脈から血液を抜き、同部位にドナー胚由来のPGCsを移植した。孵卵10日目の生殖腺系列キメラ鶏の生殖腺を摘出し、total RNAを抽出し逆転写酵素によりcDNAを合成した。雄特異的遺伝子SOX9、雌特異的遺伝子FOXL2遺伝子の発現量についても検討を行った。PGCsの移植による生殖腺系列キメラ鶏の10日目胚で雌のPGCsを雄に移植した生殖腺系列キメラ鶏胚でのSOX9の発現量は無処理の雄に比べて有意な変化は認められなかった(P>0.05)。雄のPGCsを雌に移植した生殖腺系列キメラ鶏胚でのFOXL2発現量は減少傾向にあった(P>0.05)。しかし、操作胚の左側生殖腺で40%、右側生殖腺で16%の個体がFOXL2発現を極端に低い値が観察された。サブトラクション法においては新たな遺伝子の発現は認められなかった。前述したように生殖腺系列キメラ鶏の約30%に卵精巣様の異常があったと報告されていることから、PGCsはFOXL2遺伝子発現の減少に関係すると考えられる。
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