研究課題/領域番号 |
26450388
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
的場 理子 (的場理子) 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産研究部門 家畜育種繁殖研究領域, 上級研究員 (60592574)
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研究分担者 |
今井 敬 酪農学園大学, 農学生命科学部, 教授 (70343994)
金田 正弘 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (80469840)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 繁殖 / 体外受精 / 卵子の発生能 / 正常卵割 / 異常卵割 / 遺伝子発現 / 受胎 |
研究実績の概要 |
食肉処理場由来卵巣から採取したウシ卵子(食肉処理場卵子)および生体内経腟採卵ウシ卵子(OPU卵子)を用い、過去のデータから得た第1卵割終了時間の閾値までの早期に第1卵割を終了するかどうかおよびその正常性の基準(割球の正常性の基準)に基づいて胚および各割球を分類して以下を分析した。昨年度に成功した少数細胞からのcDNA増幅法を用い、食肉処理場卵子区の割球において、全能性、エネルギー代謝、細胞周期や細胞分裂、胎子成長等に関する19個の候補遺伝子の解析を実施した。すべての異常卵割指標を含まない、すなわち第1卵割が早期に終了してかつ卵割パターンに異常がなく正常卵割した個別胚の各割球と何らかの異常卵割指標を含む個別胚の各割球には、15個の遺伝子に異なる発現が認められた。一方、第2卵割以降の胚の割球においては、改良された本cDNA増幅法を用いても十分な増幅が得られない結果が多く、遺伝子解析を行える品質ではない割球が含まれることが示唆された。体外受精に用いた精液の種雄牛の違いにおける第1および第2卵割終了時の胚の正常性を検討した結果、第1卵割における卵割終了までの時間と卵割パターンの2つの指標が、胚盤胞期胚への発生能を予測可能な項目となることが明らかとなった。OPU卵子においては、割球の正常性の基準に従って分類した胚盤胞期胚を受胚牛へ移植し、各基準別の受胎率の調査を開始し、現在も継続中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に成功したcDNA増幅法を用いることにより、今までの約3倍となる19種類の候補遺伝子の解析を可能とした。食肉処理場由来卵巣から採取したウシ卵子の第1卵割終了時の個別胚の各割球について、正常性の指標ごとにみると、閾値までに卵割が終了したかどうかでは12個、卵割割球の均等性の有無では14個、細胞断片等の存在の有無では13個の全能性、エネルギー代謝、細胞周期や分裂胎子成長等に関する遺伝子発現量の違いが見出された。第2卵割以降の胚の割球においては、十分な遺伝子解析を行える品質ではない割球が含まれることが示唆されたため、終了とする。体外受精に用いた種雄牛の精液において、第1卵割終了までの時間と卵割パターンの2項目を指標とすれば、胚の発生能を予測可能となることが明らかとなったこと、第1卵割の正常性に多くの遺伝子発現に違いが認められたことから、今後は第1卵割後の割球の一方を遺伝子解析し、残りを培養して胚盤胞期胚への発生能を検証する。OPU卵子において、第1および第2卵割の正常性が胚移植後の受胎に及ぼす検討を開始した。第1卵割および第2卵割終了時に、卵割終了時間や卵割パターンの指標において、異常となる項目のどれか1つを有する異常卵割胚とその同じ1項目の異常がない胚と比較した場合、受胎率に有意な差は認められなかった。しかし、異常となる指標の全項目に該当しない正常卵割胚は、異常となる指標のうちどれか1項目のみを有する胚に比べて高い受胎率を示した。胚移植については進行中のため今後も受胎性の調査を継続する。培養液の違いによる異常卵割の発現と胚盤胞期への発生成績の検討については、異常卵割胚の受胎が得られることが初めて見出され始めていること、その理由を検証するために次項の計画を新たに開始することから中止する。以上のことから、平成27年度の研究成果は計画に従って順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
前項で述べたとおり、研究はおおむね順調に進展しており、現在までに得られた実績を踏まえて平成28年度の研究計画を進める。新たな研究計画として、まず、第1卵割終了時に、個別に胚を割球分離し、その割球の片側を遺伝子解析に用い、残りの割球は培養を継続し、卵割の正常性が胚の発生能に及ぼす影響を検討する。さらに、第2卵割終了時の胚の染色体検査を実施し、第2卵割終了後の胚の正常性を検証する。さらに、異常卵割を経て胚盤胞期に達した胚を受卵牛に移植し、異常卵割が子牛への発生能へ及ぼす影響の検討を引き続き実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度に研究費の使用残額(107,395円)が生じた。これは、①平成27年度の研究費を効率的に使用した結果であるとともに、②国際学会において学会発表した際に発生した学会参加費等の経費(ドル)の支払いが平成27年度末に近く、為替レートを反映した算出結果により発生したためである。
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次年度使用額の使用計画 |
上記理由により発生した残額は平成28年度に繰り越し、同年度の研究計画に従って適正に使用する予定である。
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