研究実績の概要 |
本研究課題では、食肉応用を視野に入れたバイオマーカー探索とモデル動物解析法の樹立を研究目的として解析を進めている。平成28年度は衛星細胞由来の筋芽細胞培養系を用いて、Semaphorin3A (Sema3A) の発現抑制および促進が筋特異的転写制御因子群の発現に与える影響について特に解析を進めた。 筋細胞は未分化状態から分化段階に応じて特異的なマーカー(Pax7, Myf5, MyoD)を発現し筋肉分化の促進/抑制を通じて筋肉量をコントロールすることが広く知られている。そこで、活性化筋芽細胞を分化誘導しSema3A siRNAを導入またはSema3A強制発現ベクターを用いて細胞内に発現させSema3Aが筋芽細胞の増殖および分化における役割を解析した。 その結果、Sema3Aの発現を抑制した細胞に分化誘導を行った結果MyoDの発現も減少し、細胞の老化様表現型と考えられる形態(細胞核および細胞質の増大化)も顕著に観察された。発現阻害細胞では筋管を形成しない単核の細胞が培養プレートに多く存在していることを発見した。さらに筋芽細胞の増殖時においてPax7、Myf5、MyoDの発現を阻害することが知られているemerin (Emery-Dreifuss型筋ジストロフィー原因遺伝子) の発現はSema3Aノックダウンにより調節されていることを初めて明らかとした。これらの結果は2016年6月にFEBS Open Bio誌にて論文発表を行った。この研究結果を発展させるべく現在も継続して解析を進めている。
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