研究実績の概要 |
ホルスタイン種雌育成牛(6~7ヵ月齢)4頭を、預託牧場へ預託し、導入時の睡眠の質の変化と自律神経系機能の変化について検討した。移動開始前の24時間をd-1、牧場導入直後の24時間をd0とし、以降d1, d2, d7に、自律神経指標については24時間の連続記録を行った。また、各記録日の昼間6時間(13時から19時)および夜間8時間(22時から翌6時)に、行動から分類した睡眠状態の記録を行った。期間を通してすべての自律神経指標に有意な経日変化が認められた(対応のある一元配置分散分析 p < 0.05)。行動観察時間に合わせた昼6時間および夜間8時間の平均値において、心拍数はd-1に比べてd0で有意に上昇した。また、d0に比べd1, d2,およびd7では有意な低下が認められた。心拍間隔変動解析によって得られた交感神経活動の指標LF/HFは、昼間はd0に比べd2,およびd7で、夜間はd0に比べd1, d2,およびd7で有意な低下が認められた。副交感神経活動指標HFは夜間にd0に比べd2で有意な上昇が認められた。昼間および夜間の睡眠行動は、頭部を動かさず伏臥している状態(ノンレム睡眠様睡眠行動)および首が脱力し頭部を床または体に持たれかけている状態(レム睡眠様睡眠行動とも、経日変化が認められた。特に、夜間のレム睡眠様睡眠行動は有意な経日変化を示し、d-1に比べてd2で多くなる傾向が認められた。以上のように、環境の変化によって睡眠状態および自律神経系機能が大きく変化することが明らかにできた。現状ではセンサデータの無線送信などの技術開発がクリアできないと、リアルタイムな状態評価手法としての睡眠状態センサの活用は難しいが、睡眠状態によって、環境変化によるストレスの影響に強くさらされている個体をセンシングすることが可能であることを示せたと考えている。
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