研究課題
プリオン Chandler 株持続感染マウスおよび初代培養神経細胞に補体因子を反応させると、細胞膜の不安定化が起こり、PrPSc 量が減少する。本研究では、補体因子のプリオン増殖抑制効果を検討することを目的としており、今年度はプリオン感染マウスモデルを用いて、補体反応が in vivo でのプリオンの増殖に影響を与えるかを検討した。Chandler株感染 120 日目 のマウスの脳に C1qA遺伝子に対する shRNA (C1qA-shRNA) を組み込んだレンチウイルスベクターを導入し、TaqManアッセイにより C1qA 遺伝子発現を解析した。その結果、C1qA-shRNA 導入群の遺伝子発現量は対照群と比較して平均 0.52±0.11 倍であった。同条件でChandler感染 90 および 120 日目のマウスの脳に C1qA-shRNA を導入し、PrPSc量をウエスタンブロットにより解析したところ、感染 90 日目にC1qA-shRNA を導入した群では対照群と比較して、PrPSc量が平均 1.84±0.12倍 であった (p<0.05, student's t-test)。しかし、感染 120 日目に C1qA-shRNA を導入した群では対照群と比較して、PrPSc量に有意な差は認められなかった。以上の結果から、Chandler感染マウスの脳において、感染中期では補体反応によりPrPSc量が減少するが、感染後期では補体反応はPrPSc量に影響を与えないことが示唆された。
3: やや遅れている
マウス感染モデルを用いた補体因子のプリオン増殖抑制効果の検討は、感染 45、60、90、120、150 日目に補体遺伝子に対する shRNA を組み込んだレンチウイルスベクターを導入して行う予定であったが、90 および 120 目に導入する実験しか行えなかった。これは、レンチウイルスベクターを導入する量と接種部位、および採材方法の検討に時間がかかったことが理由である。
レンチウイルスベクターの導入方法が確定したので、Chandler株以外のプリオン株を感染させたマウスを用いると同時に、C1qA 以外に C3、C9 に対する shRNA の導入も行っていく。また、レンチウイルスベクターを導入する時期については、当初の予定通り、感染45、60、90、120、150日目に行う。
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