研究課題/領域番号 |
26450402
|
研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
海野 年弘 岐阜大学, 応用生物科学部, 教授 (90252121)
|
研究分担者 |
齋藤 正一郎 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (60325371)
酒井 洋樹 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (40283288)
松山 勇人 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (80345800)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 非神経性アセチルコリン / ムスカリン受容体 / M2サブタイプ / M3サブタイプ / 胃粘膜細胞 / 増殖制御 / ノックアウトマウス |
研究実績の概要 |
我々はこれまでの研究から、M2ムスカリン受容体サブタイプを欠損したマウスでは加齢とともに胃が肥大すること、M3サブタイプを欠損した場合には逆に萎縮することを見出している。これらの結果から、「M3サブタイプは粘膜細胞の分化・増殖を促進するような、M2サブタイプはこれを抑制するようなシグナル経路と連関する」という仮説が考えられる。本研究では、この仮説を実証するため、各ムスカリン受容体サブタイプ欠損マウスの胃における形態・組織学的研究、機能学的研究、生化学・薬理学的研究を行い、野生型の場合と比較検討した。 今年度に得られた成果の概要は次の通りである。①各欠損マウスの胃以外の臓器・器官に肥大や萎縮などの異常がないか検討した結果、他の主要臓器には特段の異常は認められず、欠損型マウスにおける臓器の肥大・萎縮は消化管に特異的であることが明らかとなった。②胃の神経細胞およびカハール間質細胞のネットワークに形態学的な異常がないか検討した結果、各欠損型に異常は認められず、神経ネットワークの異常が胃の肥大・萎縮をもたらしているわけではないことが明らかとなった。③胃の肥大・萎縮により、胃酸分泌、胃排出能、胃平滑筋の収縮能がどのように変化するか検討した結果、M2欠損型においてこれら機能の低下が認められた。④胃粘膜細胞にどのムスカリン受容体サブタイプが発現しているか検討した結果、M2サブタイプの存在が認められた。現在、M2サブタイプが発現している粘膜細胞種について同定を試みている。一方、M3サブタイプに関しては用いた抗体が機能せず、今後別のM3サブタイプ抗体を用いてさらに検討する予定である。以上の成果は、専門誌への投稿を現在準備中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、一部の実験項目を次年度検討予定の項目と入れ替えたものの、当初予定していた実験項目をおおむね終了することができた。しかし、胃粘膜細胞におけるM3サブタイプの同定については結論を得ることができなかった。これは、用いたM3サブタイプに対する抗体が、同サブタイプ欠損マウスの組織においても反応してしまい、従来M3サブタイプに特異的であると考えられていた抗体が必ずしもそうではないことを示している。おそらく、非特異的な結合能を有していることが原因であると考えられ、今後別の抗体を試してさらに検討する予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、どの粘膜細胞が胃の肥大に関わっているのかを明らかにするため、以下の項目を検討する予定である。①各胃粘膜細胞に対する抗体を用いた免疫組織化学的研究により各欠損マウスにおいてどの粘膜細胞の数が変化するのかを検討し、M2またはM3受容体サブタイプが増殖を調節する標的細胞を明らかにする。②M2およびM3サブタイプが発現する粘膜細胞腫を、各細胞のマーカーを用いた二重免疫染色により同定する。これにより、増殖性調節を受ける細胞にどのムスカリン受容体サブタイプが発現しているかを明らかにする。③コリンアセチルトランスフェラーゼと各粘膜細胞のマーカーとの二重免疫染色により、非神経性AChの由来となっている細胞種を同定する。④M2欠損型で見られる胃粘膜の肥厚が過形成によるものか、細胞の癌化を伴ったものか検討する。⑤M2欠損型において認められた胃酸分泌、胃排出能、胃平滑筋の機能低下がどのような機序により発言しているのか明らかにする。
|