研究課題
我々は、M2ムスカリン受容体サブタイプを欠損したマウス(M2欠損マウス)では加齢とともに胃が肥大すること、M3サブタイプを欠損した場合には逆に萎縮することを見出している。これらの結果から、両サブタイプが胃の粘膜細胞や平滑筋細胞の分化・増殖を制御するという仮説が考えられる。本研究では、この仮説を実証するため、各サブタイプ欠損マウスの胃における形態・組織学的研究、機能学的研究、生化学・薬理学的研究を行い、野生型の場合と比較検討した。今年度は主にM2欠損マウスおよびM3欠損マウスを用いた検討を進め、以下の成果が得られた。①M2欠損マウスのヘマトキシリン‐エオジン染色像において減少が認められた壁細胞については、プロトンポンプに対する抗体を用いた免疫組織化学染色を行い、その数の変化と形態についてさらに検討を加えた。その結果、壁細胞の形態、大きさに異常は認められないものの、その数は野生型と比較して有意に減少しており、M2欠損マウスで増加が認められた上皮細胞、表面粘液細胞および腺細胞(主に主細胞)とは、異なる増殖制御機構の存在が示唆された。②M2欠損マウスにおける胃の平滑筋層の厚さは、野生型と比較して有意に増加していた。一方、M3欠損マウスを用いて胃粘膜および平滑筋細胞の形態学的変化を調べたところ、粘膜の各種細胞に目立った形態学的変化は認めらなかったが、平滑筋層の厚さは野生型と比較して有意に減少しており、このことが胃の萎縮に関与していることが明らかとなった。③胃、小腸および大腸平滑筋の機能的な変化を検討した結果、野生型と比較して各欠損マウスでは、輪走筋あるいは縦走筋の収縮張力が有意に小さくなっているものの、胃排出能および大腸における内容物輸送能に差は認められないことが明らかとなった。以上の成果の一部は、国内および国外の学会に発表し、また専門誌への投稿を現在準備中である。
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Journal of Veterinary Medical Science
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Journal of Comparative Pathology
巻: 155 ページ: 29-39
10.1016/j.jcpa.2016.05.002