研究課題/領域番号 |
26450405
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
堀井 洋一郎 宮崎大学, 農学部, 教授 (80173623)
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研究分担者 |
野中 成晃 宮崎大学, 農学部, 准教授 (50281853)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | Trichinella spiralis / Paraoxonase-1 (PON1) / ブチルコリンエステラーゼ (BuChE) / 肝臓疾患 |
研究実績の概要 |
平成26年度の研究計画のうち、課題1の寄生虫感染時のPON1、PON2、PON3活性の変化と課題2の寄生虫感染によるPON1、PON2、PON3の変化が脂質の酸化や動脈硬化に及ぼす影響については、予定以上の成果が得られ以下のように纏めことが出来た。一方、課題3と課題4については症例を網羅できるだけのサンプル収集に時間がかかり、一部の症例の測定に留まっている。 【本年度の成果の纏め】 Paraoxonase-1 (PON1) 活性は様々な肝臓疾患で減少することが知られているが、慢性の人獣共通寄生虫症である旋毛虫(Trichinella spiralis) が肝臓での炎症を引き起こし、それらの肝臓への影響、特にPON1活性への影響についてはほとんど解析されていない。今年度の旋毛虫とラットを用いた研究結果により以下のことが判明した。旋毛虫感染ラットは感染後2日目よりPON1 活性が減少し始め7週目まで持続した。同様に血清中のbutyrylcholinesterase (BuChE) 活性も4日目より減少し始め2週目まで持続した。反対に血清中の炎症性サイトカインであるIL-1、 IL-6、TNF-αとマクロファージ活性化にかかわるMCP-1やMIP-1αの上昇が 寄生虫の腸管内寄生期において顕著に上昇した。また、これに伴って抗炎症性サイトカインである IL-4や IL-10 の上昇が同時期および旋毛虫幼虫の筋肉内寄生期においてもみられた。肝臓内では炎症性細胞の浸潤や肝細胞のアポトーシスも亢進していた。時期を同じくして肝臓内のPON1および BuChE のmRNA発現も著しく抑制されていた。ラットにおける旋毛虫感染は肝臓での炎症を誘導し、その結果血清中のPON1 および BuChE の活性を低下させることが本研究から明らかになった。これらの研究成果は国際雑誌である「Liver International」に「Serum paraoxonase-1 activity is related to liver inflammation during Trichinella spiralis infection in rats」のタイトルで投稿準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の研究計画のうち、課題1の寄生虫感染時のPON1、PON2、PON3活性の変化と課題2の寄生虫感染によるPON1、PON2、PON3の変化が脂質の酸化や動脈硬化に及ぼす影響については、Trichinella spiralisを用いた実験では論文作成まで完了し、現在投稿のための最終段階に有る。また、Nippostrongylus brasiliensisに関する実験も予備的実験が既に終了しており、追加実験に関するディスカッションの段階である。一方、課題3と課題4については症例を網羅できるだけのサンプル収集に時間がかかり、一部の症例の測定に留まっている。 しかし、測定方法については簡便な方法が確定できた。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度には、寄生虫感染症とその他の要因解析を進めるために、多くの農家とNOSAI獣医師の協力のもとに多数のサンプルの収集と測定を行なう。異なる条件下で飼育されている肉用和牛(繁殖用、肥育用)と乳用牛で、背景(寄生虫を含む感染症、その他の代謝性疾患などの臨床診断がなされた例)情報がはっきりしたものを、それぞれ50例ずつを目途に収集し、測定結果との関連を統計解析によって求める。また屠畜時の肝臓検査が一部可能なため、肝組織の変化とPON1の変化を比較検討できるため、より詳細な応用性が確認できる。また、Nippostrongylus brasiliensisに関する実験も予備的実験が既に終了しており、追加実験を行ない論文作成まで行なう予定である。
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