研究課題
難培養性であることが示唆されている牛趾乳頭腫症の原因菌(群)の分離培養を効率的に可能とするために開発した、3種の原因候補菌(いずれもTreponema属菌であるT.medium/vincentii様菌、T. denticola/putidum様菌ならびにT. phagedenis様菌)の特異的遺伝子配列を標的とする簡易迅速遺伝子検出法(LAMP法、Loop-mediated isothermal amplification法、ループ介在等温増幅法)の性能を評価した。評価に際しては、米国Wisconsin大学獣医学部から分与を受けた抽出DNA(3種34株の候補菌と17種20株の非候補菌の計54株)を使用した。その結果、開発した遺伝子検出法により、非候補菌は全く検出することなく、3種の候補菌をすべて正確に検出できるとともに、完全な鑑別が可能であることが明らかになった(詳細は論文投稿中)。現在では、多数の雑菌を含むがゆえに臨床サンプルから候補菌の効率的な分離は困難である。そこで、本法を菌分離前の増菌培養段階でスクリーニングに用いることに加えて、さらに増菌培養の改善を図っている。すなわち、増菌培養液に添加する抗生剤の組成を精査するとともに、免疫磁気ビーズ法の開発を試み、陽性サンプルの効率的な選別と重点的な菌分離によって、候補菌の分離を実現するために、検出系の最適化を図っている。抗生剤・生菌製剤を用いた治療前後の蹄病変部における細菌叢変化の比較解析による原因菌(群)の推定を目的として、次世代シークエンサーを用いた細菌叢解析を並行して進めている。解析がほぼ終了したので、あわせて論文投稿の準備を進めている。
2: おおむね順調に進展している
米国Wisconsin大学獣医学部との国際共同研究において開発した、3種の牛趾乳頭腫症原因候補菌を特異的に検出する簡易迅速遺伝子検査法の性能を評価し、3種の原因候補菌をすべて正確に検出かつ鑑別できることを明らかにした。詳細なデータを論文投稿することができた。同時に、増菌倍地中での雑菌発育を効率的に抑制し、標的菌を効率的に分離するための抗生剤の選択ならびに免疫磁気ビーズ法の開発を基盤とした分離プロトコールの検討を行っている。これらを組み合わせ、臨床サンプルからの原因候補菌の効率的なスクリーニング検出と菌分離を可能とするために、検出系の最適化を図っている。抗生剤・生菌製剤を用いた治療前後の細菌叢変化の比較解析による原因菌(群)の推定を目的として、並行して進めている次世代シークエンサーを用いた細菌叢解析が順調に進み、ほぼ終了した。共同研究者の見解を集約しつつ、論文投稿の準備が順調に進んでいる。
2つの論文の掲載受理を推進するとともに、上述の検出系の最適化により、牛趾乳頭腫症の原因候補菌の分離を成功させた上で、病原性解析・分子疫学解析を進展させる。
牛趾乳頭腫症の3種の原因候補菌の遺伝子検出法は確立できたので、菌分離を推進し、病原性解析・分子疫学解析を実行するため。
技術補佐員雇用により、データ解析・論文投稿を加速させる。同時に効率的な菌分離法を確立した上で、原因候補菌のスクリーニング検出と分離を進めて、研究計画を完了させる。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 3件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 5件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件) 図書 (2件) 産業財産権 (1件)
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