研究課題/領域番号 |
26450407
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
白石 光也 鹿児島大学, 獣医学部, 准教授 (20383656)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | MARCKS / 血管内皮細胞 / メチル水銀 |
研究実績の概要 |
Myristoylated alanine-rich C-kinase substrate (MARCKS) は正常な脳の発達に必須のタンパク質として知られているが、止血機構に関わる血小板や血管平滑筋および内皮細胞における機能制御分子としての役割が示唆されている。しかしその詳細な役割については未だ不明な点が多い。そこで平成26年度では、主に血管内皮細胞におけるMARCKSの役割を明らかにすることを目的として、ヒト臍帯静脈内皮細胞由来の細胞株であるEA.hy926細胞を用いて実験を行った。
Ea.hy926細胞を用いた血管新生アッセイおよび一酸化窒素(NO)産生測定から、マトリゲル上におけるチューブ形成およびNOの産生が観察され、Ea.hy926細胞が血管内皮細胞としての機能を保持していることが確認できた。そこでsiRNAによるMARCKSノックダウンの影響を観察したところ、細胞増殖率の低下、創傷治癒アッセイにおける細胞浸潤率の低下および血管新生アッセイにおけるチューブ形成能の低下が観察された。以上の結果から、MARCKSは内皮細胞の増殖とその機能に深く関与することが明らかとなった。また神経細胞において、メチル水銀毒性へのMARCKSの関与が示唆されていることから、Ea.hy926細胞にメチル水銀を処置しMARCKSへの影響を観察した。メチル水銀は濃度依存的にEa.hy926細胞の細胞生存率低下を引き起こし、これに伴いMARCKSリン酸化量の増加と発現量の低下が認められた。またMARCKSノックダウンによリ、メチル水銀による細胞生存率の低下は増強された。以上の結果から、MARCKSは血管内皮細胞の増殖や生理的機能のみならず毒性物質に対する防御機構にも深く関与することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度では、主に血管内皮細胞におけるMARCKSの役割を明らかにすることを当初の目的としており、この点において計画はおおむね順調に進展しているものと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
おおむね順調に進展しているものの、血管内皮細胞を用いた実験の一部、とくにモデル動物を用いた実験についてはややその準備が遅れており、これらの実験項目について検討を進めていく。また、実験計画に従い、血小板および血管平滑筋を用いた実験項目についてその準備と実施を進めて行く。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度実験計画のうち、特に実験動物を使用する項目についてやや遅れがあり、これに関連する経費が次年度使用額が生じた主の理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
昨年度に実施できなかった実験項目については、今年度以降に実施する予定であり、これらの実験項目における物品費として使用予定である。
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