平成28年度本研究計画および昨年度までの進捗状況に基づき、ERストレスへのER膜局在三量体Gi2タンパクの関与の証明を行った。Gi2ノックアウト細胞の作出は間に合わず、siRNA法による三量体Giα2タンパクノックダウン細胞を用いて解析を行った。ERストレス誘導時に見られるストレスマーカーGRP78タンパクの発現増加はGi2ノックダウンにより抑制され、ERストレスセンサーの一つであるATF6の活性化はGi2ノックダウンにより抑制された。他のERストレスセンサーであるPERKの下流のeIF2α活性化は、Gi2ノックダウンの影響を受けなかったが、さらに下流のCHOP発現誘導は抑制された。一方CHOPの発現が抑制されたものの、apoptosis誘導自体は増加した。PERK経路が活性化されていたにも関わらずCHOP発現が抑制されたことは、ATF6活性化が抑制された結果と考えられることから、ER膜局在三量体Gi2タンパクを介したCOPII小胞輸送の調節が、ERストレス応答に必要であることが示唆された。 GRP78タンパクとER膜局在三量体Gi2タンパクの相互関係についても検討を行った。共焦点レーザー顕微鏡によるGRP78とGi2の共局在の観察について、ERストレスの有無により変化が見られなかった。加えて免疫沈降法による両タンパクの結合親和性についても検討を行ったが、ERストレスの有無に影響は受けず、新しい知見を得ることは出来なかった。 ER膜局在三量体Gi2タンパクが直接作用する点を明らかにすることが出来なかったが、本研究により、ERストレス応答にER膜局在三量体Gi2タンパクを介したCOPII小胞輸送制御が必要であることが示され、細胞生存のためのストレス応答システムの一端が明らかとなったと考えられる。
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