研究課題
平成27年度は科研費を利用してフィリピン熱帯医学研究所(RITM)に渡航(2015年11月)し、狂犬病発病犬のサンプリングを行った。今回は大学院博士課程1名、学部学生2名が一緒に渡航し、現地のスタッフのご指導を受けながら100頭以上のサンプリングを行った。今回の渡航によって、狂犬病発病犬の材料採取法と病理診断手技等を習得できたことは勿論、フィリピンにおける様々な感染症の発生状況、対策法、問題点など、フィリピンが抱えている感染症の実状を間接的に経験できたことは何よりの宝である。また、本渡航時期にフィリピン大学において第7回アジア獣医病理学会が開催されたので、これまでの研究成果の一部をポスター発表し、最優秀ポスター賞を受賞した。さらに、発病犬の唾液腺から口腔へのウイルスの排泄機構について纏めて国際雑誌の病理学部門に投稿・受理された。
2: おおむね順調に進展している
狂犬病発病犬の顔面皮膚組織中の洞毛を用いた確定診断法の確立を目指すため、平成26年度に回収した70頭(死亡例49頭、安楽殺21例)を病理検索に供した。その結果、70頭中60頭において脳および洞毛がウイルス抗原陽性を示し、その陽性像は洞毛の環状洞の深さに位置する外根鞘の基底層に限局していた。また、anti-P 抗体に対するウイルス抗原陽性細胞は、抗NF、CK20およびCAM5.2抗体に共陽性を示した。よって、これらのウイルス抗原陽性細胞がメルケル細胞であることが初めて判明し、洞毛が脳組織に代わる狂犬病の生前・死後診断材料として極めて有効である可能性が示された。今後、さらに検体数を増やして精査したい。
今回のフィリピンRITMへの渡航によって、100頭以上の狂犬病発病犬の材料を採取することが出来たので、本年度はこれらの材料を用いて、主に脳、唾液腺(下顎腺、耳下腺、小唾液腺、鼻腺)、眼球、顔面皮膚を中心に病理学的検索を進めていく予定である。特に、顔面皮膚組織中の洞毛を用いた安価で迅速な狂犬病の確定診断法の確立を目指すとともに、学術集会発表や学術雑誌へ投稿したい。また、今後も狂犬病発病犬の材料採取を継続するとともに、犬を用いた感染実験の実現と狂犬病以外の感染症の病理学的研究基盤の構築に向けてRITMと国際共同研究態勢を強化していきたい。
消耗品の一部を他の研究費で当てたため
平成28年度の消耗品に当てる
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 4件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 5件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件)
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Jpn. J. Infect. Dis.
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