研究課題
2013年9月から2016年5月までに、13県の鹿323頭から収集した直腸便を採取した。各糞便の5倍乳剤を作製し、クロモアガーSTEC培地またはMacConkey培地を用い、37℃、24時間でSTECを分離した。また、同乳剤をノボビオシン加mEC培地で42℃、18時間で増菌培養後、クロモアガーO157培地、CT-SMAC培地に接種して、STECと同様の条件でO157の分離を行った。各培地上の大腸菌のうちstx遺伝子を保有する株をSTECとした。STECと同定された株は、stxバリアント、病原関連遺伝子(eaeA、hlyAの有無を検討した。O157分離株(過去に分離された1株を含む)は、PFGE解析、ならびにLSPA-6解析およびARMS-PCR解析による系統解析を行った。本研究では、38頭の鹿から49株のSTECが、9頭から9株のO157が分離された。STEC株のstxの内訳は、stx1のみが3株、stx2のみが43株、stx1+stx2が3株であった。さらに eaeA (+)は13株、hlyA (+)は36株であった。一方O157株は、stx2cが8株、stx1a+stx2cが1株で、全ての株はeaeA (+)、hlyA (+)であった。O157株のPFGE解析では、同地域で捕獲された5頭の鹿由来O157 5株は同じパターンを示し、合計6パターンが示された。O157株の系統解析では、1株は主症状が出血性下痢患者由来株が多く含まれるClade7に、8株は主症状が水様性下痢の患者由来株が多く含まれるClade12にそれぞれ分類された。わが国の野生鹿には、STECが広く分布しており、低率ながらO157 も分布していることが明らかとなった。PFGE解析の成績から、特定のO157クローンが同一地域で分布していることも明らかとなった。O157株の系統解析においてClade7および12に分類される株は、わが国のO157感染症患者から多く検出されることから、鹿は人へのO157感染源となる可能性が示唆された。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件)
Journal of Veterinary Medical Sciences
巻: 79 ページ: 印刷中
10.1292/jvms.16-0568
日本獣医師会雑誌
巻: 69 ページ: 277-283
http://doi.org/10.12935/jvma.69.277