ネコ伝染性腹膜炎(FIP)は,一度発症すると致死的な経過をたどる.我々はサイクロスポリン(CsA)によるFIPウイルス(FIPV)ゲノム複製および転写抑制効果を見出した. サイクロスポリンの細胞内結合蛋白質であるシクロフィリン(Cyp)のCsA結合能に影響を与える遺伝子変異体プラスミドを構築し, fcwf-4細胞に導入することによりFIPVの増殖に与える影響を解析した.その結果,CsAとの親和性を減少させる変異体は,FIPVの複製効率が低下した.本結果から,CypのCsA結合領域に結合する細胞側あるいはウイルス側因子とCsAが競合拮抗することにより,ウイルスの複製が阻害されることがわかった.
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