研究課題/領域番号 |
26450416
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
梁瀬 徹 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 動物衛生研究部門越境性感染症研究領域, 上級研究員 (90355214)
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研究分担者 |
田中 省吾 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 動物衛生研究部門越境性感染症研究領域, ユニット長 (10355216)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ウイルス / 媒介節足動物 / 獣医学 / 牛 / 異常産 |
研究実績の概要 |
本研究では、牛の異常産(流産、早産、死産、先天異常子の出産)の原因となるアカバネウイルスなどのアルボウイルスの媒介種を特定するため、人工吸血法によりウイルスをヌカカに摂取させる技術を確立し、ヌカカ体内でのウイルスの増殖の有無や感染ヌカカのだ液中のウイルスの検出を行う。本年度は、アカバネウイルスおよびアイノウイルスを、人工吸血システムにより経口的に摂取したヌカカ体内でのウイルス増殖部位について、検討を行った。 アカバネウイルスを摂取したウシヌカカおよびシガヌカカを、10日後に頭部、胸部、腹部に切り分け、それぞれの部位からRNAを抽出してRT-PCRによりウイルス遺伝子の検出を行った。その結果、両種でウイルス遺伝子が全身で確認され、初期の感染場所である腹部にある中腸から頭部やだ液腺を含む胸部に感染が広がることが明らかになった。このことは、免疫組織化学的手法(IHC法)を用いた、ヌカカ体内でのウイルス抗原の経時的な検出によっても、5日目以降にだ液腺や全身に分布する脂肪体で抗原が確認された結果とも一致している。また、抗原が検出されたヌカカの組織切片を、プレエンベディング法により抗原陽性部位をオスミウムブラックに変換させ、組織切片包埋樹脂から超薄切片を作製後、透過型電子顕微鏡で観察し、抗原に一致して、ウイルス様粒子を中腸および脂肪体で確認した。一方、一部の接種ヌカカでは腹部でのみウイルス遺伝子が検出されたことから、体内に感染が広がる上である程度の抑制が起きると考えられた。 アイノウイルスを摂取したウシヌカカおよびホシヌカカでは、10日後にウイルス遺伝子が頭部、胸部、腹部で確認された。一方、シガヌカカでは腹部でのみ遺伝子が検出されたことから、体内へのウイルスの拡散は起こりにくく、媒介能を獲得するには至らない可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、アカバネウイルスおよびアイノウイルスを経口的に摂取したヌカカで全身に感染が広がることを確認し、ウイルス媒介能を持つ可能性を強く示唆した。また、透過型電子顕微鏡を用いた観察により、アカバネウイルス抗原と一致してウイルス粒子が存在することを示唆するとともに、ヌカカ体内での局在部位を精緻に観察する手法を確立した。この2点については、当初の計画通りに達成していると考えられる。一方、だ液からのウイルスの検出手法の確立については、だ液の採取法などに手間取り、進展に遅れが認められる。 27年度は、ヌカカのアカバネウイルスおよびアイノウイルス媒介能を実験的に強く示唆することができた点は計画通りであるが、だ液の採取法の確立には至らなかったことから、当初の予定よりは若干遅れていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、ウイルスを感染させたヌカカのだ液からのウイルスもしくはウイルス遺伝子の検出を行い、感染実験に媒介能を評価するシステムを確立させる。また、得られた結果を国際学会で発表および学術雑誌に投稿し、それらの啓発活動を通して、国内産のヌカカのアルボウイルス伝播に係る重要性とその分布に基づくリスク評価についての理解を促進する。
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