研究課題/領域番号 |
26450417
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研究機関 | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
吉岡 都 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 動物衛生研究所・病態研究領域, 主任研究員 (80355198)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 獣医学 / 毒性評価 / ウシ / ルーメン / かび毒 |
研究実績の概要 |
ウシにおける有害化学物質の毒性評価のため、簡易人工ルーメン培養法とウシ由来肝臓細胞培養系を組み合わせた新規の毒性評価法を確立することを目的とし、ウシの毒性評価に適した簡易人工ルーメン培養法の検討を行った。 ホルスタイン牛の第一胃に装着したフィステルから、朝の飼料給与約4時間後に第一胃内容液を採取し、二重ガーゼでろ過した。このルーメン液(RJ)単独またはMcDougall人工唾液(Buffer)単独およびRJの1:1混合液(1:1)をフタ付きの三角コルベンに10ml採取し、窒素ガスを封入して密栓し、温水槽にて40℃、150rpmで振とう培養を行った。培養直後のRJには活発に動き回るプロトゾアが観察されたが、24時間後には約1/50に減少していた。一方、RJ単独および1:1のpHは、培養24時間後では0時間に比べて、ともに大きな変動は認められなかった。また、ルーメン培養液中の総VFA量および酢酸は24時間後に減少していたものの、正常の範囲内であった。 さらに、ルーメン代謝後の有毒物質を評価するために、フザリウム属かび毒のうち、デオキシニバレノール(DON)をルーメン液に添加し、4または24時間培養後の残量をHPLCで測定した。Buffer単独では24時間後にDONの変化が認められなかったが、RJでは24時間後には培養直後のDONの約60%が減少していた。また、1:1では同様の減少が認められたが、低下の割合は約20%に留まった。一方プロトゾア等を失活させたルーメン液では、24時間後のDONの分解活性は認められず、DONの脱エポキシ体であるDOM-1のピークが認められた。以上のことから、ルーメン培養によるDONの消失は細菌やプロトゾアによる脱エポキシ化によるものと考えられ、簡易人工ルーメン培養が機能していることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画に沿い、簡易人工ルーメン培養法を開発した。この簡易人工ルーメン培養法では、培養24時間までpHやVFA濃度が維持されており、DONの分解能を保持していることから、研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今回、フザリウム属かび毒のうち、デオキシニバレノール(DON)をモデル物質として簡易人工ルーメン培養を検討してきたが、DON以外の複数のマイコトキシンに適用することで、簡易人工ルーメン培養法の確立を目指す。また、簡易人工ルーメン培養と組み合わせるため、初代培養ウシ肝実質細胞およびクッパー細胞等を用いて、フザリウム属マイコトキシンの影響を定量的に評価可能な系を確立する。クッパー細胞は有害物質に暴露されると炎症性サイトカインを産生することから、フザリウム属かび毒の肝臓への影響を検討するため、リアルタイムRT-PCR法を用いてクッパー細胞の各種サイトカインのmRNA発現を解析する。また、初代培養肝実質細胞では、蛋白合成および薬物代謝について、フザリウム属かび毒の影響を評価する。
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