研究課題/領域番号 |
26450422
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
都築 圭子 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (30364251)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 角膜損傷 / 犬角膜上皮細胞株 / 角膜上皮細胞シート / 再生医療 |
研究実績の概要 |
犬角膜上皮細胞のフィーダーとして犬の脂肪組織由来間葉系幹細胞(ADMSC)および骨髄間葉系幹細胞(BMMSC)を用い、フィーダーとして用いた場合のそれぞれの細胞において、角膜上皮細胞の増殖・成長等に促進的に働く成長因子としてKGF(ケラトサイト増殖因子)・EGF(上皮成長因子)・HGF(肝細胞成長因子)の発現をリアルタイムPCRにより定量評価した。結果、角膜上皮細胞存在下ではADMSC・BMMSCともにHGFの発現量が有意に上昇することが明らかとなった。また、遺伝子発現レベル・タンパク発現レベルいずれにおいてもADMSCはBMMSCと比較して有意に高いHGF発現を示した。このことから、xeno-free犬角膜上皮細胞シートの作製にはADMSCが有用であると考えられた。FBSの代替として数頭の犬血清を培地に添加したが、細胞形態が丸みを帯び、明らかな変化が認められたため、血清についてはFBSを利用することとした。 犬角膜上皮細胞は継続して継代を行っていたが、110継代を越えたところで保存した。保存後解凍したところ、明らかな性状変化は認めれれていない。犬角膜上皮細胞の安全性を検討するため、ヌードマウスの皮下に移植し、腫瘍形成能の有無を検討した。6匹のヌードマウスを使用したが、いずれのマウスにおいても犬角膜上皮細胞株移植後6か月で腫瘍形成は見られなかった。今後、角型解析を加えるとともに、犬角膜上皮細胞株の増殖能力維持機構のメカニズムについても探索する予定である。 さらに保存した細胞を用いて、犬角膜上皮シートの作製を試みている。保存した角膜上皮細胞株を用いても、シートを作製でき、増殖マーカーであるp63の発現も基底層の細胞は維持してることを確認しており、現在のところ、足場材量の条件検討を行っているが、保存細胞を用いてシートを作製することで、恒常的に犬角膜上皮シート作製が可能であると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画通り、犬角膜上皮細胞シートのフィーダー細胞として自己の脂肪由来間葉系幹細胞はHGF産生能に優れ、フィーダー細胞として有用であることを明らかにした。また、自家血清についての検討も行った。想定内の範囲であったが、成体の犬血清では細胞形態の変化がみられ、以降の実験にはFBSを継続して使用することに決定した。また、ADMSCフィーダーを用いて角膜上皮シート作製を行い、p63発現を維持したシートの作製が可能であることを明らかにできた。さらに我々は、100継代以上犬角膜上皮細胞を継代し、腫瘍形成能を示さないことも明らかにし、今後の実験に犬角膜上皮細胞株として利用する準備を整えることができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は実際に角膜上皮細胞株を用いてシートを作製し、犬角膜損傷モデルへの移植実験を行う。また、今までの研究からADMSCがフィーダーとして有用と考えられるが、無フィーダーにおいても犬角膜上皮の増殖可能であった。腫瘍形成能を持たない正常細胞として、増殖を維持するメカニズムが犬角膜上皮細胞にあると考えられる。今後は、この機構を明らかにするとともに、xenofree犬角膜上皮シートを作製し、移植実験に用いる。
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次年度使用額が生じた理由 |
出張費について、学会より補助が出たため。
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次年度使用額の使用計画 |
来年度の旅費として使用する。
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