研究課題/領域番号 |
26450423
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
田中 知己 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (20272643)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 栄養 / 泌乳 / 繁殖 / 卵胞 / 黄体 / ステロイドホルモン |
研究実績の概要 |
未経産牛と泌乳牛を供試し、発情周期中の卵胞発育および黄体形成と血漿中ホルモン濃度推移について比較検討を行った。 排卵日をday0としday0~day16までは隔日でday17以降次回排卵までは連日で、超音波画像検査と採血を行った。また次回排卵時に発情を観察し、人工授精(AI)を行った。超音波画像検査では6mm以上の卵胞および黄体を観察し、AI後のday6において、給餌前後に2時間間隔で採血を行った。採血は頚静脈より行い、血漿中プロジェステロン(P4)およびエストラジオール17β(E2)濃度をEIA法を用いて測定した。 最大黄体直径およびday0から黄体が退行するまでの期間の黄体直径は、泌乳牛で未経産牛に比べ有意に大きくなった。また、同様の期間においてP4濃度は泌乳牛で高かったが、その最大濃度に有意な差は認められなかった。また、第一卵胞波後半のday8以降の期間の第一卵胞波主席卵胞直径および排卵卵胞最大直径も泌乳牛で有意に大きくなった。発情期におけるE2の最大濃度に両群間で有意な差は認められなかった。AI後day6において、給餌前後および泌乳牛と未経産牛の間でP4、E2濃度ともに有意差は認められなかった。また、day12およびday18において、卵巣内構造物とP4およびE2濃度には、泌乳牛と未経産牛間および受胎周期と不受胎周期の両比較において、ほとんどの解析項目において有意な差は認められなかった。 以上の結果より、発情周期における卵巣内構造物や血中ステロイドホルモンについて、泌乳牛で未経産牛と比較して、黄体、第一卵胞波主席卵胞、排卵卵胞直径が大きくP4濃度が高い、給餌前後でステロイドホルモン濃度に給餌の影響が認められないという結果が得られた。また、黄体初期において給餌による血中ステロイドホルモン濃度への影響は観察されず、今回実施した飼養条件であれば、卵巣機能に対する泌乳による負の影響は生じにくいと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
摂食量の異なる泌乳牛と未経産牛を比較することで、摂食の違いが代謝系および繁殖系に及ぼす影響の一端が明らかとなった。当初予定していた主となる実験は完了しており、この成果は日本獣医学会において公表し、当初の目的の一部を達成する成果である。引き続き行う実験についても予備実験をぼぼ完了しており、以上のことからおおむね順調に進展していると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の成績を基に採食量の違いが代謝系および繁殖系に及ぼす影響についてさらに検討を加える。特に採食量の増加が卵胞発育や黄体形成に促進的な効果をもたらすことが示されていることから、効果的な給餌方法を検討する。今年度の具体的な方策としては今後の研究における基礎データを収集するため、乾乳牛において高栄養給餌を行い、給餌後の卵胞発育およびそれと関連した代謝系に及ぼす効果を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末において会計上の支出の制限があったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度配分額と併せ、消耗品費として使用する予定である。
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