本研究では摂食と栄養学的観点から牛の繁殖性向上に直結する飼養管理技術について解析を行った。まず、栄養状態の異なる未経産牛と泌乳牛を臨床繁殖学的に比較したところ、泌乳牛では、黄体、第一卵胞波主席卵胞、排卵卵胞直径が大きく血中プロジェステロン濃度が高いこと、また給餌前後でステロイドホルモン濃度への影響が認められない結果が得られた。従って通常レベルの給餌処置において採食量の増加を伴う泌乳状態は卵巣機能に対する負の影響は生じにくいと考えられた。次に、ヤギにおいて効果が実証されている短期間の間欠的高栄養処置が牛の代謝系および卵巣活動に及ぼす影響を検討した。非泌乳牛を用い、発情周期の黄体期における高栄養給餌処置が卵胞および黄体の発育に及ぼす影響および代謝系および生殖系ホルモン分泌に及ぼす影響を調べた、その結果、間欠的な高栄養処置を施すことにより二峰性のインスリン分泌の増加が引き起されることが明らかとなった。一方、卵胞発育や黄体形成の指標について有意な刺激効果は観察されなかったものの、二排卵する例の増加が認められた。これらの結果を受けて最終年度では、まず高栄養給餌処置が過剰排卵処置の反応性に及ぼす影響を検討した。その結果間欠的高栄養処置を施す前に短期間の制限給餌を行うことで、卵胞発育数が増加する傾向が認められた。さらに栄養状態と繁殖機能との関連について、卵巣機能に加えて卵管および子宮機能について解析を行った。その結果、牛における子宮卵管造影法を確立し、また、子宮内部の臨床細菌学的検査法について子宮灌流液を遠心濃縮することにより、感染が疑われる特定の細菌の検出感度が向上することが示唆され、栄養状態が変動する分娩後早期における子宮内細菌汚染の消失状態について明らかにした。
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