研究課題/領域番号 |
26450427
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
村瀬 哲磨 岐阜大学, 応用生物科学部, 教授 (30303514)
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研究分担者 |
原山 洋 神戸大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (30281140)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ブタ / 精子 / 冷蔵保存 / 先体反応 / cAMP / Ca / 夏季不妊症 |
研究実績の概要 |
ブタ夏季不妊症では,夏季に採取される精子において膜の不安定化(時期尚早の受精能獲得)によりイオノホアに対する反応性(先体反応)が亢進するが,この過敏な反応を精液の冷蔵保存用希釈液に水溶性コレステロール(コレステロール-PEG)の添加あるいは希釈液の重炭酸を除くことにより抑制することができる.しかし,その作用機序が不明であったことから,本研究では,その作用機序の解明を目的として重炭酸をHEPESへ置き換えた希釈液あるいはコレステロール-PEGを添加した希釈液で希釈・保存した精子のcAMP濃度とCa2+濃度へ及ぼす影響を調べている.一方,夏季不妊症精子の治療を目的として,精子の運動性低下を阻止することが知られている脂肪幹細胞を用いて,ブタ精子の体外受精能力へ及ぼす影響を調べた.その結果, (1)ブタ精子の冷蔵保存時に添加したコレステロールは濃度依存的に精子の先体反応を遅延することを確認した. (2)ブタ精子中のcAMP濃度を測定する方法(サンプルの保存方法を含む)を確立し,希釈後3日間冷蔵保存した精子内のcAMP濃度を測定した結果,重炭酸の有無あるいはいずれのコレステロール-PEG添加濃度においてもcAMP濃度に差は認められなかった.このことから,重炭酸の存在あるいはコレステロール-PEG添加は3日間保存中の精子内cAMP生成には影響しないと思われた. (3)精子内のカルシウム含有量は少ないため,市販のキットによるカルシウム濃度測定のためには多数の精子からCaを抽出する必要のあることが明らかとなった.このため,精子からCaを抽出する方法および測定に要する精子数を検討し,一定の方法を見出した. (4)冷蔵保存したブタ精子を,脂肪幹細胞とともに前培養した後体外成熟卵へ授精したところ,精子の侵入率,多精子受精率,1卵当たりの侵入精子数および雄性前核形成率が上昇した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の目的と到達度 (1)目的:コレステロール含有量,Ca含有量,及びcAMP含有量と先体反応誘起あるいは先体損傷度の関連を調べる.到達度:精子内Ca及びcAMP含有量の測定方法は,特に抽出方法の確立までに時間を要したため,測定に遅れを生じている.しかしcAMPは確立され,Caについても一定の方法を見出した.コレステロールとCaについてはサンプルを作成して保存中であり,最終年度に測定を行う予定である.cAMP測定についてはこれまでのサンプルについてはすでに終了している.先体損傷度についてはリン酸化チロシンの局在解析と共に最終年度に測定を予定している. (2)目的:コレステロール,CaおよびcAMP濃度と体外受精能力との関連を調べる.到達度:最終年度に実施を予定している. (3)目的:コレステロールの希釈液への添加及び重炭酸イオンの希釈液からの除去が保存後の精子のへ及ぼす影響の機序を解明する.到達度:重炭酸あるいはコレステロール-PEGを添加した希釈液により希釈後17℃にて冷蔵保存したブタ精子の先体反応に関する研究は終了しており,精子内cAMP含有量に及ぼす保存中の重炭酸及びコレステロール-PEGの影響に関する検討はほぼ終了している.これまでの結果ではいずれもcAMP濃度に相違は見られなかった.なお,Ca測定のためのサンプルはすでに作成保存している.また,コレステロール含有量の測定を行う目的でサンプルを採取し保存している. (4)目的:夏季不妊症を示す精子の受精能力を高める.到達度:脂肪幹細胞が精子の体外受精能力を高めることを見出した.精子の保存液からの重炭酸除去や保存液へのコレステロール添加による人工授精後の精子の受胎能力改善を目的としているが,同じ目的で脂肪幹細胞を利用できる可能性が開かれた.
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今後の研究の推進方策 |
(1)cAMPおよびCa濃度の測定:例数が不足していると思われたので,最終年度においては,希釈液中の重炭酸とコレステロール-PEG添加した希釈液にて希釈した精子中のcAMP濃度の測定を繰り返し行う.一方,精子中Ca濃度を測定できる方法を見い出したので,その方法が有効であることを確認し,精子中Ca含有量を測定するため,cAMPと同様に冷蔵保存した精子中のCa含有量を測定する.サンプルの一部はすでに作成しているので最終年度にはそれらを測定に供する. (2)精子あるいは精漿中コレステロール含有量,Ca含有量及びcAMP含有量の周年変化を明らかにする目的で,毎月採取した精液を使用して,これらの周年変化を明らかにする. (3)リン酸化チロシンの局在解析:前述のとおり夏季不妊症と思われる精子の受精能獲得状態が亢進している可能性があるので,このことを明らかにするため,精子の受精能獲得進行中に発現することが知られているタンパク質のチロシンリン酸化を免疫染色によって調べる.4ヶ月おきに採取したサンプルを使用する予定である. (4)先体の蛍光染色:リン酸化チロシンの局在解析と同様,夏季不妊症では受精能獲得亢進による先体反応の過剰誘起が考えられるので,このことを明らかにするため,4ヶ月おきに採取した精子中の先体の損傷度の季節変化を蛍光染色(Alexa-PNA染色)により明らかにする. (5)希釈・保存中に添加される重炭酸及びコレステロールが,保存後の精子の体外受精能へ及ぼす影響を調べる.重炭酸をHEPESに置換した希釈液あるいはコレステロール-PEGを添加した希釈液にて希釈した精液を保存し,保存後精子を洗浄して体外受精に供する.
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