研究課題/領域番号 |
26450431
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研究機関 | 酪農学園大学 |
研究代表者 |
鈴木 一由 酪農学園大学, 獣医学群, 教授 (30339296)
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研究分担者 |
樋口 豪紀 酪農学園大学, 獣医学部, 教授 (00305905)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | エンドトキシン / ウシ / Cow SideTest / 予後判定 / 甚急性乳房炎 / 牛呼吸器病症候群 |
研究実績の概要 |
Cow-Side Portable Test Systemによる生乳中エンドトキシン活性値測定法の評価 【目的】甚急性乳房炎の予後判定においてエンドトキシン活性値の評価は有用だが、測定が煩雑かつ時間を要するため実用的ではない。本研究ではPTSを用いて生乳中エンドトキシン活性値の測定が可能か否かを正確度および精度評価し、標準法であるLimulus Amebocyte Lysate(LAL)-カイネティック比濁法(KTA)と比較した。【方法】乳房炎を罹患していない29頭の健常ジャージー種より搾乳した生乳を用いた。生乳をendotoxin free waterを用いて100、200または400倍希釈し、PTSおよびKTA法によりエンドトキシン活性値を測定した。PTS法はLAL-カイネティック比色法であり、LAL試薬と既知の標準エンドトキシンが充填されたカートリッジにサンプルを用いて測定した。得られたデータの比較はFriedman検定を、相関性はピアソンの積率相関を用いて評価した。【結果】100倍希釈生乳ではPTSTMおよびKTAの測定値間で有意差が認められた(p<0.001)。一方、200または400倍希釈生乳では両測定方法ともに満足のいく正確度および精度が得られ、また両測定法間で有意な差は認められなかった。200倍(p<0.001)および400倍希釈生乳(p<0.001)ではPTSおよびKTA法の測定値間で有意な相関が認められた。【考察】PTSは実験室法であるKTA法と比較して、生乳を200または400倍希釈して用いたとき同等の正確度、感度および相関が認められた。 【総括】PTSは携行可能で少量の血清および生乳サンプルで迅速診断が可能なことから、本法はCow Side Testとして血清および生乳中エンドトキシン活性値の測定が可能であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成26年度計画であった「③Kinetic Limulus Amebocyte Lysate assay(Kinetic-LAL)を標準法としたEndosafe PTSTMの精度および正確度評価」を当該年度(平成27年)に実施し、これを論文公表した。平成27~29年度実施予定の研究計画については、すでに着手している。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画どおり、平成27年度以降に計画されている下記の研究を順次進めていく。 ①血漿および乳中エンドトキシン活性値を指標とした甚急性乳房炎の病態評価 3箇所の臨床施設(北海道および愛媛県)において、臨床獣医師が甚急性乳房炎と診断した症例の初診から第3病日までの血漿、血清、分房乳(4区)を採取し、本学でエンドトキシン活性値、二次元電気泳動による血清および乳中炎症マーカーの同定、リアルタイムPCRによる炎症サイトカインの発現量を測定し、エンドトキシン活性値との関連性を評価する。これらによって、初診時での予後診断に深く関与する「炎症増幅」の病態や機序を明らかにする。従って、ターゲットとする炎症サイトカインはTNF-α、IL-6と17A、転写因子であるSTAT3、NF-kB1、NF-kB2、そしてMMP-9を予定している。 ②血漿、肺胞洗浄液および子宮洗浄液中エンドトキシン活性値を指標とした牛の炎症性疾患の病態評価 本学動物病院のBRDC子牛症例の肺胞洗浄液および血漿中エンドトキシン活性値、各種画像診断、炎症サイトカイン、MMP-9結合型ハプトグロブリン、肺サーファクタント蛋白(SP-A、SP-D)に基づいて病態解析とエンドトキシン活性値による診断能評価を行う。また、妊娠鑑定および繁殖検診時に採取した子宮洗浄液中のエンドトキシン活性値と不受胎、子宮内膜炎、空胎日数との関連性を評価する。また、不受胎、子宮内膜炎症例については プロスタグランディンF2α受容体(PTGFR)とオキシトシン受容体(OXTR)についても病態鑑別のためにその発現量を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度以降(29年度まで)の計画は、(1)血漿および乳中エンドトキシン活性値を指標とした甚急性乳房炎の病態評価、(2)血漿、肺胞洗浄液および子宮洗浄液中エンドトキシン活性値を指標とした牛の炎症性疾患の病態評価、および(3)携帯型エンドトキシン測定器を用いた予後評価の確立を計画している。このうち、当該年度は比較的費用のかからない(3)携帯型エンドトキシン測定器を用いた予後評価の確立を選考させた。そのため、簡易エンドトキシン活性値測定機器であるPTSのカートリッジをPTS販売元である米国チャールスリバー社で試作を依頼作成してもらった。その結果、(1)および(2)の試験で使用するエンドトキシン測定用試薬およびリアルタイムPCRの消耗品量が少なかったため当該助成金が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
27年度に計画していたエンドトキシン測定用試薬、リアルタイムPCR用消耗品およびそのユニバーサルプライマー等の消耗品を28年度に購入する予定である。
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