研究課題/領域番号 |
26450431
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研究機関 | 酪農学園大学 |
研究代表者 |
鈴木 一由 酪農学園大学, 獣医学群, 教授 (30339296)
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研究分担者 |
樋口 豪紀 酪農学園大学, 獣医学群, 教授 (00305905)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | エンドトキシン / ウシ / Cow Side Test / 予後判断 / 甚急性乳房炎 / 牛呼吸器病症候群 |
研究実績の概要 |
エンドトキシン・チャレンジ(ETX)子牛における白血球および肝臓中STAT-3 mRNA発現量の経時的変化 【目的】牛の大腸菌性乳房炎および呼吸器疾患においてエンドトキシンが重篤度や予後と関連性が高い。エンドトキシンがTLR-4に作用すると活性化されたNF-kBが核内移行してIL-6やTNFαなどの炎症反応を誘導するが、STAT-3はIL-6ポンプの中心のシグナルとなってNF-kBファミリーの発現を調節しているが、牛ではその詳細は明らかではない。よって、ETX子牛を用いて白血球および肝臓中STAT-3のmRNA発現量を調査した。【方法】健常子牛12頭のうち2.5μg/kgのO-111:B4由来LPS試験群と無投与対照群に群設定した。ETX前、投与直後および30分、1、2、4、8、12、24時間目に臨床記録、採血および肝生検を行い、血漿エンドトキシン活性値を測定した。また、白血球浮遊液および肝生検サンプルを用いてSTAT-3、IL-6、TLR-4、NF-kB1およびB2のmRNA発現量をRealtime PCRを用いて測定した。【結果】エンドトキシン活性値は30分をピークとし、4時間後には0に復した。STAT-3のmRNA発現量は白血球で投与後2時間、肝臓で投与後4、8時間に有意に増加した。NF-kB2のmRNA発現量は白血球で投与後1~4時間、肝臓で2~4時間に有意に上昇したが(p<0.05)、NF-kB1のmRNA発現は認められなかった。【考察】牛の全身性炎症反応においてNFk-B1ではなく白血球および肝臓でSTAT-3、NF-kB2のmRNA発現量が有意に増加したことから、両遺伝子は炎症評価に有用なマーカーであることが示唆された。また、NF-kB2とSTAT-3の両者は全身炎症を相互調節している可能性が示唆されたため、今後精査していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は「血漿、肺胞洗浄液および子宮洗浄液中エンドトキシン活性値を指標とした牛の炎症性疾患の病態評価」を実施予定であったが、27年度から計画を前倒しで開始することができたために、その概要を「49th Annual American Association of Bovine Practitioners [AABP] Conference(Charlotte Convention Center, Charlotte, NC, USA)」において公表し、現在論文を執筆中である(Endotoxin activities in bronchoalveolar lavage fluids from calves with mycoplasma bronchopneumonia.)。また、28年度は呼吸器疾患とエンドトキシンとの関連性を評価するためのエンドトキシンチャレンジモデル試験を実施し、29年度のAABPにおいて報告する予定であるが、「血漿および乳中エンドトキシン活性値を指標とした甚急性乳房炎の病態評価」については3箇所の臨床施設からの症例、血漿および乳汁サンプルの収集は完了しているが各種測定と病態解析が終了していないため、29年度に集中的に実施する。よって、計画はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は本研究課題の最終年度であるために、当初計画で平成27年度以降に実施予定の計画を順次進めていくとともに、これまでの研究成果の公表準備を行う。 ①血漿および乳中エンドトキシン活性値を指標とした甚急性乳房炎の病態評価 これまでに収集した症例の血漿および各種生体試料において、エンドトキシン活性値の測定と遺伝子発現パターン解析(TNFα、STAT-3、NF-kB2、MMP-9)を行う。これに加えてC反応性タンパクおよび血清アミロイドAについても遺伝子およびタンパクレベルでの解析も新たに計画している。 ②血漿、乳汁、肺胞洗浄液および子宮洗浄液中エンドトキシン活性値を指標とした牛の炎症性疾患の病態評価 本学動物医療センターの呼吸器疾患症例の肺胞洗浄液および血漿中エンドトキシン活性値における関連性を明らかにしたため、更なる検証のために甚急性乳房炎症例の血漿および乳汁中エンドトキシン活性値の関連性を調査する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度は呼吸器疾患とエンドトキシンとの関連性を評価するためのエンドトキシンチャレンジモデル試験を実施したが、「血漿および乳中エンドトキシン活性値を指標とした甚急性乳房炎の病態評価」については3箇所の臨床施設からの症例、血漿および乳汁サンプルの収集は完了しているものの各種測定と病態解析が遅延していたため測定用試薬と消耗品の一部購入を見合わせたため次年度使用額が生じた。これらの検査は平成29年度に集中的に実施する。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度では主に「血漿および乳中エンドトキシン活性値を指標とした甚急性乳房炎の病態評価」で用いる症例の血漿および生体試料中エンドトキシン活性値の測定と各種炎症関連タンパクのmRNAおよびタンパクレベルでの測定を行う。また、牛の炎症性疾患の病態評価を症例およびエンドトキシンチャレンジモデルを用いて検討するために必要な消耗品および採材器具(生検針など)を購入する予定である。 従って、次年度の研究費の使用については、エンドトキシン測定用試薬(Endosafe KTA他)、リアルタイムPCR関連消耗品、STAT-3、NF-kB2、MMP-9の測定用ユニバーサルプライマーおよびエンドトキシン・チャレンジ試験に関連した消耗品を計画している。
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