研究課題/領域番号 |
26450432
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研究機関 | 酪農学園大学 |
研究代表者 |
永幡 肇 酪農学園大学, 獣医学群, 教授 (10133571)
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研究分担者 |
樋口 豪紀 酪農学園大学, 獣医学群, 教授 (00305905)
今内 覚 北海道大学, (連合)獣医学研究科, 准教授 (40396304) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | Bifidobacterium breve / 有用微生物 / 乳房炎制御 / クリアランス / 乳牛 |
研究実績の概要 |
乳牛の潜在性乳房炎分房への有用微生物を用いた免疫賦活による感染微生物の排除を意図し継続してデータの集積を目的として野外研究を展開した。乳牛において、乳房炎分房(体細胞数30万/ml以上)10頭14分房に対して有用微生物(B.breve,3x109cfu)に加えて抗菌活性を有するラクトフェリン分解産物(LFH)を乳腺内に注入し、注入分房乳の生理活性を検索するとともに免疫学的応答の評価としてサイトカイン関連遺伝子発現とその蛋白レベルを測定した。B.breve+LFH注入により回復した治癒分房(4頭7分房)と非治癒分房(3頭7分房:S.aureus)に分類し反応性を検討した。乳汁の防御因子(Lf)は注入3日後に治癒分房において著増し21日後に有意に減少した。化学発光反応は注入1日後に有意な増高が認められた。B.breve+LFH注入によるサイトカインmRNA発現において、IL-1β、IL-8, TNF-αおよびNF-κBは注入1、3日後に、IL-6は注入7日後に発現増高が認められ乳LF濃度との関連が示唆された。乳中のサイトカイン産生量において、IL-6,TNF-αは両群ともに注入1日後の最高値を示した。治癒群ではIL-8,IgGは注入後3日後に最低値を示し漸次減少した。非治癒群ではIL-1β,IL-12で注入1日目に最高値を示した後減少した。乳房炎分房へのB.breve+LFH注入にともなう自然免疫の誘導反応において治癒および非治癒分房乳に機能的な相違が存在することが認められた。S.aureusを除いた原因菌(CNS,OS,菌陰性も含む)による乳房炎に治療効果が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ウシの乳腺感染に対して抗生剤の使用に代替可能な有用微生物を用いた乳腺の感染防御能を賦活することによるウシの乳房炎の制御を意図し研究を展開してきた。本研究は、実験に使用可能な搾乳牛の選定(乳房炎、原因菌、乳期、乳量、治療、薬物)があり、実験による乳の廃棄を伴うためその実施は研究者の計画のみでは遂行できず農場管理者の協力を努力して得てきた。研究は供試牛の有用微生物調整液を搾乳後の分房への注入により分房乳の反応(生理・免疫反応)を把握しており概ね「研究計画」に準じて行い成果をえてきている。問題点としては、他人の財産としての乳牛を使用させていただいており実験感染を行えず、あくまでも自然感染牛を使用させていただいて展開しているものであり、要因として原因菌の種類、炎症程度、乳期、乳量など個体の影響が反映されており、実態を反映した成果がえられている。治癒牛・非治癒牛の統計学的比較のために個体数の増加が望ましい。
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今後の研究の推進方策 |
研究推進:これまでの研究で本研究の目的にそった効果が有効と確認される条件が確認されてきたので、要因を絞りその有効な条件を備えた対象(注入対象牛および対象分房)についてその反応性をさらに明確にしたい。 実用性の検討:これまでの有用微生物を用いた乳腺の感染制御についての基礎研究を基に共同研究者・飼養者の協力を得て野外の乳房炎乳牛を対象とした拡大試験(北海道・四国・中国地方:酪農場)を実施する。対象牛(選別)へ有用微生物調整液の注入による効果を注入前・後で比較し施用による臨床的有用性を評価する。管轄診療獣医師の協力の下で実施される。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の過程で消耗品(試薬)費が計画よりも安価で入荷し利用できた。
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次年度使用額の使用計画 |
2016年度の消耗品費・試薬・消耗器具費としての活用を計画する。
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