研究実績の概要 |
SRBD1遺伝子領域を網羅する計19個のSNPsを対象に、柴犬145例(緑内障60例、非緑内障85例)とシー・ズー犬79例(緑内障27例、非緑内障52例)を用いてTaqManアッセイを行った。柴犬では、5個のSNPs(rs8584450、rs8844580、rs22018514、rs22018513およびrs9172407)が緑内障と有意な相関(P<0.05)を示した。これら5個のSNPsのうち、rs9172407において最も大きいオッズ比(OR)が認められた(OR=3.00)。シー・ズー犬では、2個のSNPs(rs8807390、rs9172407)が緑内障と有意な相関(P<0.05)を示した。これらの2個のSNPsのうち、rs9172407で顕著な相関が観察された(P=0.00011、OR=6.93)。柴犬の結果とシー・ズー犬の結果を統合したメタ解析により、rs9172407がイヌの緑内障において最も重要であると考えられた(P=0.000060、OR=4.57)。 rs9172407について、NCBIのBLAST(http://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi)を用いて、イヌとヒトの間でホモロジーを検索したところ、rs9172407は、ヒトのSRBD1上のChr.2: 45,609,587-45,609,592の位置に相当すると思われたが、ヒトのこの領域(Chr.2: 45,609,587-45,609,592)には、既知のSNPは存在しなかった。イヌのrs9172407およびヒトのChr.2: 45,609,587-45,609,592は、それぞれのSRBD1遺伝子内の同一のイントロン領域に位置していることが分かった。オンラインデータベース(Blood eQTL blowser)を用いて、ヒトのSRBD1遺伝子領域内のSNPsと遺伝子発現の相関を調査した結果、ヒトにおいて、SRBD1遺伝子領域内のSNPsが、遺伝子発現量の変動に有意な影響を与えていることが分かった。このことから、イヌにおいても、SRBD1遺伝子領域内のSNPsが、遺伝子発現量の変動に有意な影響を与えている可能性が示唆された。
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