研究実績の概要 |
ヒトのNHEJ機構で働くコア修復蛋白質として、Ku70,Ku80,XLF,XRCC4,Lig IV, DNA-PKcs, Artemisが報告されている。また、Ku80のスプライシングバリアントとして、KARP-1が報告されている。他方、(1)Artemisはプロセッシングが必要な極一部の損傷修復のみに関与する、(2)Lig IVはXRCC4により発現量が調節されるので、Lig IV欠損細胞とXRCC4欠損細胞の表現系は酷似している、(3)イヌDNA-PKcsは既に配列が決定されている、(4)KARP-1はイヌゲノムにコードされていない。従って、伴侶動物のNHEJ機構を標的とする新しい放射線増感剤開発の基盤を構築するために、イヌのNHEJ機構で働くと予想される遺伝子の中からKu70, Ku80, XLF, XRCC4遺伝子に注目し、基礎情報の収集と分析を行ない、それら遺伝子のクローニングを開始した。また、イヌのNHEJ蛋白質の特異抗体の作製と細胞内局在制御機構の解析を開始した。さらに、新たに同定されたNHEJ候補遺伝子がNHEJ機構の活性を制御している可能性が示唆されているので、これについても検討を開始した。本年度は、Ku80に対する抗体の作成や発現遺伝子plasmidの構築等も含めて、ほぼ計画通りに進んだ。尚、イヌがん細胞を材料とする実験は細胞株の入手ができなかったので遅れているが、次年度以降に開始する予定である。
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