研究課題/領域番号 |
26450442
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
舟場 正幸 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (40238655)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 脂肪細胞 / イヌ / TGF-βファミリー |
研究実績の概要 |
白色脂肪細胞は、過剰のエネルギーを脂肪として蓄えるのに対して、褐色脂肪細胞は、エネルギーを熱として消費する。両細胞は互いに連携してエネルギー代謝を調節しているので、連携の破綻は肥満に繋がる。TGF-βファミリーは、TGF-β群、Activin群、BMP群に大別される細胞成長・分化因子群で、多岐にわたる生物現象を制御する。TGF-βファミリーは、白色ならびに褐色脂肪前駆細胞の分化過程において中心的な役割を果たしている。しかしながら、分化した脂肪細胞におけるTGF-βファミリーの役割は未知である。ALK3 (BMP・GDF群の I型受容体)遺伝子のアミノ酸置換を伴う一塩基多型と肥満度に関連があること、ALK7 (I型受容体)遺伝子の変異も肥満と関係することが明らかにされている。しかしながら、TGF-βファミリーの作用点は明確でなく、分子機構の詳細も不明である。本研究は、白色・褐色脂肪細胞の機能制御におけるTGF-βファミリーの役割を解明することを目的としている。 研究二年度には、イヌ脂肪組織より単離した間質脈管細胞を脂肪細胞に分化させる方法を確立した。また、TGF-βファミリーが白色脂肪細胞の機能をどのように調節しているかを網羅的に把握する第一歩として、インスリンが白色脂肪細胞における代謝産物濃度におよぼす影響を明らかにした。従来、インスリンが白色脂肪細胞の様々な代謝に影響を及ぼすことはよく知られてきたものの、代謝の最終結果である代謝産物濃度におよぼす影響については不明であった。したがって、これを調べることは、方法論の妥当性を検証する意味からも意義があると判断した。その結果、インスリンによってクエン酸回路を構成する代謝産物の濃度が増加すること、遊離アミノ酸濃度は総じて減少することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね当初予定していた計画通りに進んでいる。イヌ間質脈管細胞から脂肪細胞への分化法を確立した。今後は、この方法を用いて、TGF-βファミリーが脂肪細胞分化で果たす役割ならびに、内因性TGF-βファミリーの活性におよぼす因子の解明に取り組む。また、メタボロームの手法を用いて、脂肪細胞が活性化する際の代謝産物濃度の変化を網羅的に明らかにし、この方法は、代謝を総合的に考える上で極めて有用であることを示した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、イヌ脂肪細胞分化に及ぼすTGF-bファミリーの役割を明らかにするだけでなく、イヌの避妊手術の際に得られる性腺周囲脂肪組織よりRNAを回収し、RT-qPCR法により脂肪細胞関連遺伝子ならびにTGF-βファミリーシグナルに関連する分子群の遺伝子発現の定量を行うと同時に、カルテ情報を基に、それらの遺伝子発現と肥満との関連を推察する。また、メタボロームの手法を用いて、TGF-βファミリーが脂肪細胞の代謝産物濃度に及ぼす影響を網羅的に検討する。これまでに、トウガラシ抽出物が褐色脂肪細胞の機能に影響を及ぼすUcp1やPgc-1αといった遺伝子の転写を直接的に促進することを見出している。今後は、トウガラシ抽出物がTGF-bファミリー関連遺伝子群の発現に及ぼす影響を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画していた研究を推進した結果、おおむね予定していた予算を執行した。より多くの実験の遂行によって、研究はより良質になる。より良質な研究を目指して、同等品が複数の試薬メーカーによって販売されている場合は、より安価なものを選択するなどの工夫を重ねた結果、研究初年度は13万円程度の繰越金が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
当初の計画に従って研究を推進する。次年度も研究初年度同様に、節約とより多くの実験を心掛けて研究に臨む。
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