研究課題/領域番号 |
26450443
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
服部 雅一 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40211479)
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研究分担者 |
福島 祐二 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (90583146)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 免疫老化 / 自己免疫疾患 / 全身性エリテマトーデス / オステオポンチン / 胚中心 / 死細胞処理 / 貪食 |
研究実績の概要 |
本年度は老化関連T細胞 (SA-T細胞)と全身性エリテマトーデス (SLE)発症との関連について明らかにするために,昨年この細胞から産生される炎症性サイトカインの1つオステオポンチン (OPN)が自己反応性胚中心 (spt-GC)形成に関与していることが示されたことに基づき,その分子メカニズムについて解析を行った。 SLEモデルマウスであるNZB/W F1 (BWF1)マウスの脾臓を経時的に観察したところ,加齢に伴い死細胞がspt-GCに局在するマクロファージ(Mf)上に蓄積していくことが明らかになった。そこでspt-GCにおける死細胞処理に係わる分子群の発現変動を調べたが,加齢による変化は見られなかった。これに対し,spt-GCに局在するSA-T細胞が産生するOPNの発現量は加齢に伴い上昇した。試験管内においてOPNの死細胞貪食に対する影響を調べたところ,直接,死細胞貪食を阻害することが示された。この阻害は,OPN添加による低分子量G蛋白,Rac1の持続的活性化が原因であることも明らかになった。SA-T細胞と死細胞処理破綻の関連性を調べるため,昨年同様SA-T細胞の移入実験を行ったところ,SA-T細胞を移入したときにのみ,spt-GCにおける死細胞蓄積が観察された。 GCにおける死細胞処理の破綻が,SLE発症に深く関与していることが示唆されていたが,今までなぜ,SLEにおいて死細胞処理の破綻が起こるかという点について明らかにされていなかったが,本研究においてSA-T細胞とそこから産生されるOPNがその原因の一因であることが示された。現在,SA-T細胞の機能を阻害する抗体を作製し,SLE発症に及ぼす影響を調べているが,予備検討では非常に良く抑制することが示す結果が得られている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本来の研究目的であった老化関連miRNAトランスジェニックマウスの作製が予想していた以上に困難を極め,そのトラブルシューティングに時間がかかっている。一方,老化関連T細胞の解析,特にSLE等の自己免疫疾患との関連性については非常に研究が進んできている。
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今後の研究の推進方策 |
1.老化関連miRNAトランスジェニックマウスの作製については当初の計画どおりこのまま作成を進めていく。 2.老化関連T細胞については,その機能を抑制するモノクローナル抗体の作製に成功したことから,SLE発症に及ぼす影響について解析を進めていく。 3.老化関連T細胞の分化・増殖を制御する分子メカニズムを解明する。特にmiRNAとの発現について注目し,解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
差額が生じたのは端数によるものであり,概ね計画どおり研究費が執行されたものと考えられる。
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次年度使用額の使用計画 |
当初の計画どおり,研究費を執行する予定である。特に本年度は論文投稿が2本予定されており,その英文校閲費ならびに投稿費にその他にかかる金額が大きくなることが予想される。
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