これまでの研究により老化関連T細胞(SA-T細胞)が自己反応性胚中心(spt-GC)形成ならびに自己抗体産生に関与していることが明らかになったことから,SA-T細胞上に発現するCD153に対するモノクローナル抗体を用いてSA-T細胞を生体から除去する効果について検討した。 自己抗体の上昇が観察される前の16週齢のNZB/W F1 (BWF1)マウスに,新規作製したCD153モノクローナル抗体をマウス個体あたり500μg,週2回腹腔内投与を行ったところ,抗dsDNA自己抗体の上昇がほぼ完全に抑制されるとともに尿蛋白も有意に抑制された。CD153抗体投与群の腎臓を解析したところ,コントロール抗体投与群で観察される糸球体への免疫複合体沈着がほぼ完全に抑制されていた。一方,通常の抗原に対する抗体産生は,CD153抗体投与群とコントロール抗体投与群の間で差が見られなかった。次に治療的効果について調べるため,抗dsDNA抗体価が1000U/mL以上に上昇しているBWF1マウス(28週齢)を用いて投与を行ったところ,CD153抗体投与により抗dsDNA抗体価が有意に減少するとともに尿蛋白も有意に抑制され期間中の生存率は83%であった。一方,コントロール抗体投与群では投与開始1ヶ月頃から抗dsDNA抗体および尿蛋白の上昇がほぼ全例において認められ,投与期間中の生存率は34%であった。CD153抗体投与による尿蛋白値の低下および生存率は現在,SLEの治療薬として主に用いられている非特異的免疫抑制剤セルセプト(ミコフェノール酸モフェチル:MMF)に匹敵するものであった。以上の結果は,CD153抗体は正常の抗体産生に影響を及ぼすことなく,自己抗体産生を特異的に抑制しうる効果を持つことを示しており,この抗体のSLE治療薬としての可能性が示唆された。
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