研究課題/領域番号 |
26450445
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
日下部 健 山口大学, 共同獣医学部, 准教授 (20319536)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 血管形成 / 胎盤 / 子宮NK細胞 / 流産 |
研究実績の概要 |
マウス胎盤におけるADAMDEC1の発現動態が未確定であったため、mRNAの発現パターンを検討したところ、妊娠中期にピークを迎える発現動態を示した。検出抗体を十分に評価し、免疫組織化学的手法によりADAMDEC1の胎盤内動態を調べると、子宮NK細胞において特異的な陽性反応が認められた。子宮NK細胞は、胎盤形成期における血管再構築と正常な妊娠の維持に重要であると考えられている。妊娠の進行に伴う胎児性胎盤血管の直径変化は、ADAMDEC1の発現動態との間に相関性が確認された。一方、ADAMDEC1と子宮NK細胞の機能的な細胞動態との間には相関性が得られなかった。 血管内皮細胞株HUEhT-1を用い、ADAMDEC1と血管形成との直接的な関係性を調べた。まだ最終的なデータではないが、ADAMDEC1はHUEhT-1の新規血管形成を約30%低下させた。細胞死誘導効果は認められず、血管内皮細胞の血管新生機能を調節する作用がADAMDEC1に備わっていることが考えられた。 ADAMDEC1は子宮NK細胞の遊走に関与する可能性も想定される。血管形成作用と合わせ、複数の異なるADAMDEC1の生理活性が胎盤形成に関与する可能性があり、この視点から研究を継続する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ADAMDEC1の妊娠期における発現動態を確定し、胎盤内局在性を見出すことができた。当初は発現動態から細胞増殖、分化、細胞融合、遊走などの広い範囲からADAMDEC1の機能を考察することを想定していたが、子宮NK細胞との関連性を発見し、そこからののアプローチにより、血管新生との関連性を効率良く調べることができた。
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今後の研究の推進方策 |
培養系において、ADAMDEC1の血管新生調節メカニズムに関する実験を行う必要がある。具体的には、notchシグナルの変動について、血管内皮細胞の細胞動態と合わせて確認する。また、子宮NK細胞について、HIF-1、kiss-1、アクチン重合などを見ることで、ADAMDEC1による遊走能への影響も検討したい。 ADAMDEC1の妊娠維持への効果を総括するため、メタロプロテアーゼインヒビターを用いたin vivo実験系を策定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度に発生した次年度使用額を使い、卓上型クリーンベンチの購入を検討していたが、別予算での購入が可能になったため。
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次年度使用額の使用計画 |
比較的高価な抗体、ウシ胎子血清、分子生物学的検査試薬等の購入に充てる。
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