研究課題
自然免疫系の一員である好中球やマクロファージは、感染に対する初期防御を担っている。これらの食細胞が病原体を貪食して活性化すると、NADPHオキシダーゼの触媒によって酸素からスーパーオキシド(O2-)を産生し、続いて過酸化水素(H2O2)へと代謝される。好中球においては、ミエロペルオキシダーゼの触媒によって、さらにH2O2から次亜塩素酸(HOCl)が生成する。本研究は、NADPHオキシダーゼのノックアウトマウス (CGDマウス)やMPOのノックアウトマウス (MPO-KOマウス)が、単にカンジダ死菌や酵母の細胞膜成分であるザイモザンに曝されるだけで、非感染的に重篤な肺炎を発症するという興味深い現象のメカニズムを探ることを目的とした。平成28年度は、ザイモザン刺激を受けたMPO-KO好中球がMIP-2,IL-1β,TNF-αなどの炎症性サイトカイン類を過剰産生することを突き止め、肺に集積した好中球からの過剰産生によって、さらに多量の好中球が集積して炎症が重篤化する可能性が高いことを示した。また、MPO-KO好中球はザイモザン貪食能も野生型より遙かに高いことも発見し、この高貪食能も肺炎重篤化の一因と考えられた。また、この貪食能の亢進はMac1受容体→FAK→ERK経路の過剰活性化に起因するものであることも判明した。一方、CGDマウスにカンジダ死菌を投与しても、MPO-KOマウスに類似した重篤な肺炎を発症した。そのメカニズムを探った結果、CGDマウスでは好中球からのIL-1βの過剰産生とマクロファージからのKCの過剰産生が肺炎重篤化の一因である可能性が示された。以上の結果は、NADPHオキシダーゼやMPOが欠損してO2-やHOClを産生できない好中球やマクロファージは、炎症性サイトカイン類を過剰産生して炎症重篤化を導く可能性を示唆する興味深い知見である。
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http://yaratani.sci.yokohama-cu.ac.jp