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2015 年度 実施状況報告書

外傷性脳損傷時のグリア細胞の役割-グリア細胞をターゲットとした神経保護薬の探索-

研究課題

研究課題/領域番号 26450447
研究機関大阪府立大学

研究代表者

森山 光章  大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 准教授 (20275283)

研究分担者 高野 桂  大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 准教授 (50453139)
中村 洋一  大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 教授 (90180413)
研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワード外傷性脳損傷 / アストロサイト / 浮腫 / ミクログリア / 国際情報交換
研究実績の概要

前年度の結果から、当初からの検討候補であった酢酸、クレアチンとケトン体(beta-ヒドロキシ酪酸およびアセト酢酸)のなかで、酢酸が最もグリア細胞に対して抗炎症効果を持つことが明らかとなったので、平成27年度は、酢酸が作用する機序を詳細に検討し、以下のことを明らかにした。1) アストロサイトにおいて、酢酸は種々の酸化ストレス時にみられる活性酸素種 (ROS) 産生を抑制した。2) アストロサイトへの酢酸の添加はグルタチオン (GSH) 産生を増加させ、酸化ストレスによる低下から回復させた。3) アストロサイトへの過酸化水素添加は細胞死を引き起こすが酢酸の同時添加により抑制された。この効果は上記のROS産生の低下とGSH産生の増加によると考えられる。4) アストロサイトにtraumatic brain injury (TBI) の状態を再現できるモデルであるfluid percussionを施すと細胞膨潤が誘導されるが、あらかじめ酢酸を添加することによりその膨潤は抑制された。Fluid percussion後に酢酸を加えた場合、抑制効果は見られなくなった。
以上より、アストロサイトにおいて酢酸はTBIによりもたされる細胞膨潤などの炎症性変化を抑制する可能性が示唆された。この効果には、ROS産生の低下とGSH産生の増加が関与していると考えられ、これらはこれまで報告されていなかった酢酸の新しい効果である。また、あらかじめ酢酸を添加することにより、後に起こるTBIによるアストロサイトの膨潤を予防できる可能性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

グリア細胞のうち、アストロサイトに対する酢酸の効果の検討に時間がかかり、当初の予定であったミクログリアに対する効果の詳細な検討が未だ完成していない。

今後の研究の推進方策

今年度は、前年度までのやり残しであったミクログリアに対する酢酸の効果の詳細な検討から進める。さらにin vitro培養細胞系で得られた「酢酸はアストロサイト膨潤を抑制する」という現象がin vivoにおいても同様に当てはまるかどうか確認するため、ラット大脳に直接TBIを施し、脳浮腫を引き起こした時の酢酸の効果を検証する。またTBIにより引き起こされる種々の行動異常においても酢酸がどのような効果をもたらすか確認する。これらの検討により、種々に要因により起こる脳浮腫を酢酸が抑制することが可能か否かが確認でき、酢酸の臨床への応用が開けると考えられる。

次年度使用額が生じた理由

前々年度の繰り越し(学会発表とりやめによる)がほぼそのまま残った。

次年度使用額の使用計画

今年度の学会発表のための旅費に用いる予定である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2015

すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Mechanism for increased hepatic glycerol synthesis in the citrin/mitochondrial glycerol-3-phosphate dehydrogenase double-knockout mouse: Urine glycerol and glycerol 3-phosphate as potential diagnostic markers of human citrin deficiency.2015

    • 著者名/発表者名
      Moriyama M, Fujimoto Y, Rikimaru S, Ushikai M, Kuroda E, Kawabe K, Takano K, Asakawa A, Inui A, Eto K, Kadowaki T, Sinasac DS, Okano Y, Yazaki M, Ikeda S-I, Zhang C, Song Y-Z, Sakamoto O, Kure S, Mitsubuchi H, Endo F, Horiuchi M, Nakamura Y, Yamamura K-I, Saheki T.
    • 雑誌名

      Biochim. Biophys. Acta

      巻: 1852 ページ: 1787-1795

    • DOI

      10.1016/j.bbadis.2015.04.023.

    • 査読あり / 国際共著 / 謝辞記載あり
  • [学会発表] ミクログリアの組織型トランスグルタミナーゼ発現とエンドサイトーシスに対するアンホテリシンBの効果2015

    • 著者名/発表者名
      河邊憲司, 高野桂, 森山光章, 中村洋一
    • 学会等名
      BMB2015
    • 発表場所
      神戸ポートアイランド(兵庫県神戸市中央区)
    • 年月日
      2015-12-01 – 2015-12-04
  • [学会発表] Acetate attenuates LPS-induced nitric oxide production in cultured astrocytes。2015

    • 著者名/発表者名
      Moriyama M, Kurebayashi R, Kawabe K, Hashimoto A, Takano K, Nakamura Y.
    • 学会等名
      第58回日本神経化学会大会
    • 発表場所
      大宮ソニックシティ(埼玉県さいたま市大宮区)
    • 年月日
      2015-09-11 – 2015-09-13

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公開日: 2017-01-06  

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