研究課題
前年度までTraumatic brain injury (TBI) による影響を主にアストロサイトを用いて検討し、TBI後に見られるアストロサイトの膨潤を酢酸は抑制することを明らかにした。実験計画の最終年度である平成28年度は、グリア細胞のうちミクログリアにフォーカスを当て検討した。初代培養ミクログリアへLPSを添加し炎症性変化を引き起こしたところ、細胞内グルタチオン (GSH) 量の低下や活性酸素種(ROS)産生の増加が観察されたが、酢酸の同時添加によりGSHは回復し、またROS産生の増加が抑えられ、酢酸は抗酸化活性を発揮すると考えられた。しかし、同様の実験をミクログリア株化細胞であるBV-2細胞を用いて行ったところ、GSHは回復せずROS産生の抑制は認められなかった。したがって、酢酸の抗酸化能はBV-2細胞ではみられないと考えられた。ミクログリアにTBIの状態を再現できるモデルであるFluid percussionを施し、得られる培養上清をアストロサイトに添加したところ細胞膨潤がみられたことから、ミクログリアから放出された因子が細胞膨潤を引き起こすと考えられた。ミクログリア培養上清を分析したところ、炎症性サイトカイン(TNF-aやIL-1b)の増加が確認された。さらに、あらかじめグリセリン三酢酸 (GTA) を経口投与することにより脳内の酢酸レベルを増加させた後、in vivo動物にTBIを施すとTBI後の浮腫が抑制されることを見出した。これらの結果から、酢酸の投与は脳内炎症やTBIによる浮腫に対して抗酸化能を発揮することで抑制する可能性が示唆された。
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