ゲノミックインプリンティングをはじめとするDNAメチル化機構の詳細は明らかにされておらず、いつ、どのようにして特定のDNA配列がメチル化修飾を受けるのかは不明である。本研究では、ゲノミックインプリンティング機構解明の一途として、生殖細胞形成過程でのみ共発現しインプリント確立に不可欠なDNAメチル基転移酵素DNMT3A2とその補酵素DNMT3L(DNMTs)を胚発生過程で恒常的に高発現するトランスジェニックマウスを作製し、DNMTsがアクセスしやすい領域を特定することを目的とした。 前年度までの解析結果から、トランスジェニックマウスの出生率が野生型マウスと等しいものの、生後20週齢までに全て致死となること、しかし、7つのインプリント遺伝子のDNAメチル化に顕著な異常がないことを示した。一方で、トランスジェニックマウスでは、インプリント領域以外の領域で出生後に高メチル化される領域が存在することが示された。本年度は、論文投稿・受理に向け不足しているデータ、’トランスジェニックマウスにおけるインプリント遺伝子のmRNA定量解析’、を実施した。その結果、Slc38a4遺伝子の発現がトランスジェニックマウスで野生型よりも有意に高いことがわかったが他の遺伝子の発現に差は認められなかった。Slc38a4遺伝子のDNAメチル化には差異がないことは既に確認しており、体細胞分裂期の細胞においてインプリント領域は外来性DNMTsが作用しにくくなっていることが、裏付けられた。以上の結果からDNMTsがアクセス可能な領域は生殖細胞と体細胞で異なることがわかった。
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