申請者は、細胞外液中の遊離脂肪酸がシグナル分子して精子の運動性を制御すると仮説提唱し、これまでにオメガ3系不飽和脂肪酸や脂肪酸受容体FFAR4 (GPR120) アゴニスト暴露により、マウス精子の運動性が亢進することを明らかとしている。今年度は、精子の運動性亢進に関与するFFAR4下流のシグナル伝達経路、各種阻害剤を用いて検討した。その結果、FFAR4を介したマウス精子の運動性亢進には、phophatidylinositol-3 kinase (PI3K)/Akt-protein kinase (Akt) 経路ならびにp38 MAPキナーゼ経路が関与すること。この経路を介した精子の運動性促進は受精能獲得の有無に関わらず誘起されること。さらに、この経路は先体反応には関与しないことを見出した。本結果は、不飽和脂肪酸がシグナル分子として細胞膜の受容体を介して精子の運動性を制御する新規メカニズムの存在を示唆するのもである。
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