研究課題
体細胞クローンとiPS 細胞の誘導研究は、細胞分化制御と可塑性に伴うエピジェネティック制御を理解する上で非常に重要な技術であるがその根本的分子機構は未解明である。体細胞クローンとiPS 細胞の初期化機構は、マウスと家畜の場合では作用機序が異なることが多く報告されており、また依然として効率が低率であることから不明な点が多い。本研究では、マウス及びブタを家畜モデル生物としてiPS 細胞と体細胞クローンの相違を踏まえて核の初期化機構の包括的解明を目指した。最初にiPS細胞への初期化を促進させる転写活性化領域を用いた転写化法をさらに高めるため、マウスiPS細胞を用いて検討を行ったところ特定のアミノ酸をマスター転写因子Oct4に融合することでiPS細胞への初期化効率が向上した。この転写活性化法は、アメリカ平原ハタネズミやニワトリ由来iPS細胞の樹立にも効果的であった。次にiPS細胞と体細胞クローンにおける核の初期化の障壁が、ヘテロクロマチンを制御する中心的な修飾と考えられているH3K9の高メチル化であることが報告されていることから、メチル基転移酵素SUV39阻害薬chaetocinをブタ体細胞クローン胚を処理することで脱メチル化誘導を行うと、クローン胚のH3K9のメチル化が低下することが明らかになったが、クローン胚の胚盤胞への発生率を向上させるには至らなかった。また、ヒストン脱メチル化酵素であるKdm4dを予めドナー体細胞やレシピエント卵細胞、もしくは両方に強制発現させることでクローン胚のH3K9のメチル化レベルが低下し、胚盤胞への発生率を向上させるだけではなく多能性幹細胞マーカーであるOct4やSox2の発現も受精卵程度にまで回復した。すなわちH3K9のメチル化低下により初期化の障壁が下がることで核の初期化が促進したことが明らかとなった。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 4件、 査読あり 4件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
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