カイコのW染色体に関する変異体を新たに入手したので、これまでに得られているW染色体上のDNAマーカーのマッピング結果を再検討した。その結果、これまでに得られているマーカーの分布を、若干、改める必要のあることが明らかとなった。その結果は論文にまとめて発表した。 これまでにカイコのW染色体上に発見されている多種類の「動く遺伝子」の中に、他の生物のゲノム中では見られない形態をとるレトロトランスポゾン(SBTEと命名)が発見されたが、さらに詳細にW染色体のDNA塩基配列データを解析した結果、ある動く遺伝子(短いレトロポゾンと称するタイプ)が、その左右の配列を伴って転移するタイプであることが明らかとなった。この結果に関しては、現在、論文発表の準備をしている。 カイコ以外の鱗翅目昆虫のW染色体のDNA塩基配列情報を得るために、イチジクカサンという蛾のW染色体の解析も行った。この種は沖縄県の石垣島で採集された1ペア由来のものを継代飼育しているため、W染色体は1種類である。したがって兄妹のDNAを比較することによりW染色体のマーカーを得ることができる。W染色体のRAPDマーカーを得る実験をしたところ、カイコの場合よりも非常に効率よくマーカーを得ることができた。カイコの場合は3000種類ほどの任意プライマーで12個のマーカーが得られたが、イチジクカサンの場合は、その10倍の効率でマーカーを得ることができた。これらのマーカーの塩基配列を解析し、現在、論文発表の準備をしている。 カイコで報告されているヒトのパーキンソン病のモデルになるという品種に関して、その結果を再検証した。その結果、パーキンソン病との類似性は行動にも生化学的特性にも認められず結果に関しても極めて疑問のあることが判明した。この結果は論文として発表した。
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