研究課題/領域番号 |
26450465
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
天竺桂 弘子 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 講師 (80434190)
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研究分担者 |
坊農 秀雅 大学共同利用機関法人情報・システム研究機構, ライフサイエンス統合データベースセンター, 准教授 (20364789)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | カイコガ / 尿酸 / DJ-1 / 酸化ストレス |
研究実績の概要 |
カイコガ(Bombyx mori)の幼虫には油蚕(あぶらこ)と呼ばれている尿酸代謝に異常を持つ変異体が存在する。申請者はドパミンを合成に必須であるチロシンハイドロキシラーゼの脳内発現量が著しく低下し、体が震える、食欲および性欲低下の異常行動を示すこれまでの油蚕とは一線を画す変異体系統opを発見した。
申請者は昨年度、カイコガ変異体 opおよび野生型の超並列(次世代)シーケンサーHiseq 2500での全ゲノム配列および各組織におけるRNA-seq解析を実施した。op変異体には油の形質に個体差があることが申請者等の先の研究で明らかになっている。そこでカイコガ幼虫1個体より主要な組織(中腸、絹糸腺、マルピギー管、精巣、卵巣)を摘出し、RNAの精製を試みたところRNA-seq解析ライブラリーの準備のために十分な量のRNAを得ることができなかった。そこで、RNAの精製手法を一部改変し、ライブラリー作製に臨んだため、この準備に時間を要した。続いてカイコガ変異体opならびに野生型のゲノムサンプルおよびRNA-seq解析を行い、分担研究者が配列解析ならびにデータベース作成を行った。
本研究の目的はカイコ変異体opの野生型とは異なるゲノム上の違いを見出し、原因遺伝子を確定することであるが、当初の予定では全ゲノム配列解析においてすでにリリースされているリファレンス配列データを用い、迅速にゲノム上の違いを見いだせる予定であった。ところが、実際に解析データをマッピングしてみると、野生型ゲノム配列の約半分程度しか当てはまらず、リファレンスデータとの間に大きな差があることが明らかになった。そこで、配列解析方法を既存の手法から変更するとともにopゲノムのポジショナルクローニングで23番染色体上にあるとされる候補部位を絞込み、新たに作成し直したデータベースとの照合から原因遺伝子を同定する手法に変更し、本年度も継続して配列解析を遂行することとする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型シーケンサーによる遺伝子解析および遺伝子発現解析が終了し、配列データ解析もおおむね順調に進むとともに、原因遺伝子が存在する部位周辺のデータ情報も得ているため。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は配列解析方法を既存の手法から変更する。また、opゲノムのポジショナルクローニングも同時に行い、23番染色体上にあるとされる候補部位を絞込む。現段階では23番染色体上の候補部位には生物資源研が作成したカイコガデータベース上には4つの遺伝子しかマップされていないが、RNA-seqのデータをマッピングすることで新たに作成し直したデータベースとの照合から原因遺伝子を同定する手法に変更する。従って本年度も継続して配列解析を遂行することとする。
また、DJ-1と尿酸合成経路の検討のため、DJ-1のノックダウンしたカイコガ系統の作製方法を検討中である。培養細胞を用いた実験ではおおむね良好な結果が得られているので、本年度は個体においてDJ-1をノックダウンした系統を作製する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
ゲノムおよびトランスクリプト解析に使用するためのハードディスクが購入予定額よりも安価で購入することが可能となったため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
遺伝子工学実験用消耗品として使用する予定である。
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