研究課題/領域番号 |
26450466
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小野 肇 京都大学, 農学研究科, 助教 (70452282)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 嗅覚受容体 / ミカンコミバエ / 誘引物質 |
研究実績の概要 |
昨年度までに、果実類の重要害虫であるBactrocera 属ミバエ 3 種、ミカンコミバエ、ウリミバエ、ナスミバエの化学感覚器官において発現している受容体の遺伝子配列を網羅的に解析して、化学感覚受容体を同定した。本年度は発現量の大きい嗅覚受容体について、発現量の解析と機能解析を試みた。ミバエの誘引物質に対する行動は雄のみが強く誘引されるため、化学受容関連遺伝子の発現量が雌雄で異なることが期待された.しかし発現量の大きな嗅覚受容体について、定量RT-PCR により雌雄の発現量を比較したが有意差は認められなかった。 次に、ミカンコミバエの発現量の大きな嗅覚受容体11種について機能解析を行った。アフリカツメガエル卵母細胞で嗅覚受容体を発現させ、Bactrocera 属ミバエに対して誘引活性や電気生理応答を示す21 種類の化合物への応答を計測した。その結果、2種類の嗅覚受容体に関して、植物に含まれる揮発性の化合物に応答することを明らかにした。重要害虫を多く含むミバエ科の昆虫について、初めて嗅覚受容体の機能を解明することができた。 昆虫のステロイドホルモンのエクダイソンの生合成経路については、反応経路が未解明のブラックボックスとなっている。そのため、モデル生物のミバエであるショウジョウバエを用いて、エクダイソン生合成過程の解明を試みた。エクダイソン生合成に関与するCyp6t3の遺伝子発現をノックダウンしたショウジョウバエ幼虫を用いて、この遺伝子の機能の解析を試みた。その結果、ショウジョウバエでは、CYP6T3の機能が欠損すると微量のEしか生合成できなくなるため、1齢から2齢へ脱皮できても3齢へ脱皮できなくなると考えられた。3齢脱皮に必要な量のEを生合成するために、CYP6T3がエクダイソンへと変換されやすい中間体を供給していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ミバエ科の昆虫は重要害虫を多く含むが、これまで嗅覚受容体の機能を解析した報告例はない。今回、ミカンコミバエについて2種類の嗅覚受容体の機能を明らかにした。そのため、ミバエ科の昆虫での初めての嗅覚受容体の機能の解明となる。
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今後の研究の推進方策 |
このたび、機能を明らかにした嗅覚受容体のリガンドがBactrocera 属ミバエ に対して、どのように行動に影響を与えるかを明らかにする予定である。機能を明らかにした受容体は同定した嗅覚受容体の一部にすぎない。このたび、ミバエ科の嗅覚受容体の機能解析の方法を確立することができたので、今後、機能未知の受容体について、さらに解析を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度に購入した高価な分子生物実験用のキットが残っていたため、消耗品費の使用が抑えられた。また、オリゴDNAの購入先を安価な業者に依頼したり、PCR酵素を自作したりして、消耗品費を抑制することができた。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は嗅覚受容体発現のためのcRNA合成キットなどの高価な試薬を多く購入する予定なので、それらの消耗品費に使用する。また、嗅覚受容体発現実験は研究協力者の東京大学の研究室で行う予定である。その旅費に充てる予定である。
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