研究課題/領域番号 |
26450468
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
宇野 知秀 神戸大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (80240852)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 蚕 / Rab / 神経ペプチド / 免疫組織染色 |
研究実績の概要 |
昆虫の羽化・変態・休眠・成長などの様々な生理現象は、昆虫の脳を含む神経組織で合成され体液中へと分泌される神経ペプチドにより引き起こされる。神経ペプチド分泌機構を解明することを目的として、我々は低分子量GTP結合蛋白質であるRabに着目した。本研究では、まずRabの内、3種のRab(Rab3,Rab7,Rab27)に焦点を合わせた。先行研究において、カイコを飢餓状態にすると脳内のRab7の量が増加することがわかっている。Rab7量の増大は、転写因子が遺伝子の転写調節領域に結合し引き起こされると考えられた。そこで、まずRab7の発現量が転写レベルで制御されるかを飢餓状態と飢餓状態でないカイコの脳のmRNAを用いた定量的PCRを用いてmRNAの量を調べたところ、飢餓状態と飢餓状態でないときのmRNAの量は変化しなかった。この結果、飢餓状態での脳内でのRab7の量の増加は転写レベルで制御されずに、翻訳レベルで制御されていることが推測された。次に、先行研究においてカイコ脳内の神経ペプチド合成細胞には少なくともRab1,7,8,11,14が存在する。これらのRabとは異なり、Rab3とRab27は神経ペプチドを運搬・分泌する組織である軸索、アラタ体、前額神経節(摂食行動に関与する器官)に特異的に存在することがわかっている。これまでの実験ではホールマウント法を用いたために、Rab3とRab27がアラタ体に存在すること明らかにしたが、どの神経細胞に存在しているかは不明であった。そこでアラタ体の組織切片を作ることを試みた。また、アラタ体における神経ペプチドとの局在性をみるために、ratでRab27の抗体をrabbitでrab3とEffectorであるRab3/27GEFの抗体を作成した。 現在、得られた組織切片と抗体を用いた免疫組織染色を行っている。結晶を得るための発現・精製技術も確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Rab7 の発現量が転写レベルで制御されているかを飢餓状態と飢餓状態でないカイコの脳のmRNA を用いた定量的PCR を用いて調べたところ、転写量は変わらなかっために次の翻訳レベルの制御の研究を行うことができる。Rab3,Rab27,Rab3/27GEFの抗体および組織切片技術の確立によりアラタ体でのRab3とRab27の機能を解析するための手段は整っている。RabX6についても結晶を得ることはできているので、解析可能である。
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今後の研究の推進方策 |
Rab27,Rab3,Rab3/27の抗体とアラタ体切片を用いた組織染色を行うことにより、Rab3,Rab27の神経ペプチド分泌における生理的役割を明らかにする。RabX6については、立体構造解析を行うための結晶を随時作成している。RNAiについては、蚕に投与する実験を行っている。
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次年度使用額が生じた理由 |
Rab3およびRab27のeffectorの抗体を作成するために、資金を持ち越した。 RNAiを行うためにもちいるキットを購入するために資金を持ち越した。
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次年度使用額の使用計画 |
抗体を作成し、蚕のアラタ体切片を用いた組織染色を行う。 複数のRabについてRNAiを行うための条件設定に用いる。
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