研究課題/領域番号 |
26450469
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
山中 明 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20274152)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 毛状鱗粉 / 季節型 / チョウ類 / 季節適応 / 夏型ホルモン |
研究実績の概要 |
チョウには出現する時期によって異なる表現形質を示す種が存在し、この変化を季節型と呼ぶ。翅の表現形質以外の表現型多型を調べるためにモンシロチョウ成虫の脚に生じる毛状鱗粉に注目し、毛状鱗粉の日長・温度との関係および野外採集個体の月ごとの変化を調査した。幼虫を長日および短日条件下で飼育し、羽化した成虫の脚の腿節部に生じる毛状鱗粉の本数・長さを計測した。その結果、飼育個体では短日・低温条件を経験した個体と長日・高温条件を経験した個体の毛状鱗粉の本数および長さには有意な差が認められた。さらに、野外採集個体も月ごとの日長・温度変化に対し、毛状鱗粉の本数および長さに変化が生じていた。本種の脚の毛状鱗粉は季節多型を示し、季節型を分類する指標季節型による本種の翅の紋様と形状の違いに着目し、各種指標を数値化し、季節型の違いについて検討のひとつとして有用な表現形質であることが示唆された。また、脳由来の因子が、本種の毛状鱗粉形成の調節に関与している可能性が示唆された。ルリタテハ幼虫を、長日・短日条件下で飼育し、羽化した成虫の左右の前・後翅の翅れらのデータから翅の面積に占める瑠璃色帯の面積と白い斑紋の面積の割合を求めた。その結果、雌雄ともに夏型成虫よりも秋型成虫において瑠璃色帯の占める割合が大きくなった。翅の面積に占める白い斑紋の割合は夏型、秋型で変化はなかった。前・後翅の後縁のくぼみの角度を比較した結果、夏型よりも秋型で後縁のくぼみは鋭角になっており、秋型成虫の翅の輪郭は切り込みが深くなることが判明した。今回の研究により、本種の季節型の違いを初めて数値化して示すことができた。青森産と山口産のベニシジミの毛状鱗粉について比較検討を行い、現在解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シロチョウ科、タテハチョウ科、シジミチョウ科およびアゲハチョウ科の各種チョウ類の季節型ならびに毛状鱗粉について順調に解析を進めている。特に、毛状鱗粉形成に脳由来の因子が関与していることが数種のチョウ類で確認され、おそらく夏型ホルモンである可能性が示唆された。従って、今後とも、夏型ホルモン(SMPH)の単離精製のための材料であるヒメアカタテハ蛹の脳の大量確保を継続して行く必要がある。平成27年度にバングラデシュに渡航し、亜熱帯地域に生息するチョウ類の毛状鱗粉を調査予定であったが、同国の治安が悪化し、不急の渡航を控える勧告が出たこともあり渡航を中止した。今後、毛状鱗粉の生理学的意義を詰める必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
毛状鱗粉形成の調節機構に夏型ホルモン(SMPH)が関与している可能性が示唆されたので、SMPHの部分精製標品を用いて、本当に毛状鱗粉形成の調節にSMPHが関与しているのか、別な因子が関与しているのかを検討していく。南方系、北方系のチョウの毛状鱗粉についても調査を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品費の購入額の差額により13262円が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額(13262円)を本年度の消耗品費に加え、研究を推進していく予定である。
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