研究課題/領域番号 |
26450471
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
井田 隆徳 宮崎大学, 産業動物防疫リサーチセンター, 准教授 (00381088)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 新規生理活性ペプチド / オーファンGPCR / 昆虫 / モデル生物 |
研究実績の概要 |
本研究では、昆虫において新規生理活性ペプチドの探索を行い、これらペプチドの摂食行動への関与を解明することにより害虫の防除や有用昆虫の効率的育成を目指すことを目的とする。昆虫の内分泌制御、特に摂食行動に対する制御メカニズムはホ乳類に比べるとこれまでほとんど明らかにされていない。これは摂食行動を調節する因子、また作用する受容体の発見が遅れていることによると考えられる。私達は、これまでにショウジョウバエの未知の受容体に対する新規生理活性ペプチドCCHamide-1 CCHamide-2, dRYamide-1, dRYamide-2, trissin5種類発見している。これらの新規生理活性ペプチドの生理作用をモデル生物であるショウジョウバエやクロキンバエにおいて解析したところ、CCHamideは強力な摂食促進作用を持っていることに対して、dRYamideは強力な摂食抑制作用を持っていることを発見した。さらにCCHamideの摂食促進作用はfat bodyから分泌されたCCHamideが脳内のインシュリン産生細胞に作用し、インシュリン様ペプチドの分泌を制御することによって発現指定可能性を見出した。このように新たな生理活性ペプチドの発見は、新たな生理機能、作用調節メカニズムの解明に繋がる可能性を有している。これらを踏まえ、本研究ではさらなる新規生理活性ペプチドの探索を行う共に、発見した生理活性ペプチドについて産業応用可能な種においても発見することを目的とした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ショウジョウバエにおいて発見した新規生理活性ペプチドについて、各種昆虫に存在することをデータベース上で確認した。しかし、同じ節足動物である甲殻類においてはデータベースが充実していないため、生体からのペプチド抽出を試み、クルマエビにおいてCCHamde, dRYamideの同定に成功した。さらに、軟体動物門に属するホタルイカ、アサリなどでも単離・精製を行い、dRYamideについて同定に成功した。さらに線虫であるC.elegansにおいてもdRYamide様ペプチドの同定に成功し、現在、機能解析中である。この中で、クルマエビにおいてはCCHamideは摂食行動を誘発し、dRYamideは摂食行動の強力な抑制と潜砂行動を誘発することを見出している。 また新規生理活性ペプチドの探索については、昨年度より、CHO細胞ではなく昆虫細胞でのアッセイ系の構築を試みており、現在、dRYamide受容体によるポジティブコントロールの構築には成功し、順次、オーファンGPCR発現細胞を作成中である。
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今後の研究の推進方策 |
昆虫における複雑な内分泌制御、特に摂食行動のメカニズムを解明するためには、さらなる新規生理活性ペプチドの発見が望まれるが、現在の所、新たな生理活性ペプチドの発見には至っていない。しかし、昆虫細胞を使った新しいアッセイ系が立ち上がったことにより、発見の可能性が拡大したと思われる。これまでに発見した生理活性ペプチド同様、新たに新規生理活性ペプチドを発見できれば、さらなら研究の発展が見込まれる。さらに、甲殻類、軟体動物、線虫へと探索領域が広がっており、産業応用への可能性が期待できる。特に線虫については、植物寄生性線虫においても生理活性ペプチドを同定できたので、国内、国外問わず、線虫の農業被害を食い止める一つのツールになる可能性を秘めており、今後の展開が非常に期待できる。
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