研究実績の概要 |
本研究では、昆虫において新規生理活性ペプチドの探索を行い、これらペプチドの摂食行動への関与を解明することにより害虫の防除や有用昆虫の効率的育成を目指すことを目的とした。その結果私達は、これまでにショウジョウバエの未知の受容体に対するCCHamide-1 CCHamide-2, dRYamide-1, dRYamide-2, trissinなど5種類の新規生理活性ペプチドを発見した。まず、これら発見したペプチドがショウジョウバエのどこに分布しているのか特異抗体を用いた免疫染色にて明らかにした。それぞれ、脳やfat bodyなど摂食行動に関係の深い部位に発現を認め、実際にCCHamideは強力な摂食促進作用を持っていることに対して、dRYamideは強力な摂食抑制作用を持っていることを発見した。さらにCCHamideの摂食促進作用はfat bodyから分泌されたCCHamideが脳内のインシュリン産生細胞に作用し、インシュリン様ペプチドの分泌を制御することによって発現指定可能性を見出した。昆虫でのさらなる新規生理活性ペプチドの探索のために、これまでアッセイに用いていたホ乳類細胞に加え、昆虫細胞でのアッセイ系も立ち上げた。それと同時に昆虫と同じ節足動物であるクルマエビにおいてもこれらペプチドを同定し、摂食調節機構への関与を明らかにし、産業応用への可能性を探っている。さらにより詳細なメカニズム解明のため、モデル生物として有用な線虫においてもこれら新規生理活性ペプチドの類縁ペプチドを発見し、解析を始めている。
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