研究課題
囲食膜破壊がフゾリンによる直接作用と間接的作用のいずれなのかを解明するために、カイコ3齢幼虫に囲食膜が大きく壊れない低濃度のスピンドルを食させ、消化管内でのフゾリンの分布状態、囲食膜への結合の有無を、中腸のパラフィン包埋切片に対する免疫組織化学的手法で解析した。これにより、フゾリンが囲食膜に直接結合することがin vivoで初めて示された。また、フゾリンは、囲食膜の前部から後部まで全体的に結合していた。次に、囲食膜崩壊プロセスの最終段階に中腸内プロテアーゼが関与しているかどうかを解明するために、プロテアーゼ作用を抑制した場合に膜崩壊の抑制が起こるかどうかをその指標となるウイルス感染率の変化の有無で調査した。カイコ幼虫にEDTA(セリンプロテアーゼ抑制)、プロテアーゼ抑制カクテル(数種類のプロテアーゼ活性の抑制)を食させて、核多角体病ウイルス感染率の変化を観察したところ、EDTA処理区で感染率の低下傾向が認められた。このことから、フゾリン投与における囲食膜の崩壊へ少なくともセリンプロテアーゼが関与している可能性が示唆されたが、同時に虫への薬害の影響も認められたため、厳密な実験が更に必要と考えられた。フゾリンの立体構造と機能との関連を解明するためのフゾリン発現系を確立するために、大腸菌にフゾリン遺伝子の機能部位(5’側。全長の2/3)を組み込んだ。その結果、大量発現に成功し、次年度の変異体作成のための基盤を確立した。フゾリン大量生産用の酵母外来遺伝子発現系の開発を目的に、作成済みの組換え酵母50クローンをBMMY培地等で培養し、菌体および培養上清でのフゾリン発現をSDS-PAGE、ウエスタンブロッティングにより解析した。現時点では、発現の確認に至っていない
2: おおむね順調に進展している
囲食膜破壊のメカニズムの研究に進展が見られたことや、大腸菌発現系でフゾリンの発現に成功したことなどのため。
酵母発現系では培養条件の検討を行なう。他は予定に沿って実施する。
フゾリンの立体構造解析を次年度(2015年度)に先送りしたため、このための経費が次年度にまわった。
フゾリンとその変異体の立体構造解析をこの予算を使用して行なう。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)
Proc Natl Acad Sci USA
巻: 112 ページ: 3973-3978
/10.1073/pnas.1418798112
蚕糸・昆虫バイオテック
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