合成性フェロモンをによって虫の配偶行動を阻害する防除法である交信撹乱により、多くの雌は未交尾のまま取り残される。短命なガ類の場合と異なり、果樹害虫フジコナカイガラムシは未交尾雌が3か月以上生存する。これまで交信撹乱が実用化されていなかったフジコナカイガラムシにおいて、長期間未交尾のまま生存した雌のフェロモン放出量や産卵能力の推移は未解明であった。これらを把握し、かつ、その要因を解析することは、今後、フジコナカイガラムシの交信攪乱を実施し、その効果を解析うえで重要であると考えられる。 これまでの研究により、交尾時の羽化後日数の経過に伴う雌成虫の繁殖パフォーマンスと性的魅力の消長が異なることが明らかとなった。つまり、繁殖パフォーマンス(産卵数)は羽化直後をピークにその後低下するが、性的魅力(放出する性フェロモン量)は羽化後28日後がピークとなる。 雌成虫の繁殖パフォーマンスに体内の共生微生物が関与している可能性を検証するため、フジコナカイガラムシ体内の共生微生物量を測定したところ、交尾時の羽化後日数に伴う共生微生物量の消長は繁殖パフォーマンスと密接な関係があることが示唆された。さらに、共生微生物量を直接的に測定するため、Whole mount FISH法で共生微生物を蛍光染色した。その結果、フジコナカイガラムシ体内の一次共生微生物および二次共生微生物の染色に成功し、体内の共生微生物保持量を直接観察することが可能となった。
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