研究課題/領域番号 |
26450477
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
多田 千佳 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (30413892)
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研究分担者 |
清和 研二 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (40261474)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 人工林 / アンモニア酸化 / 間伐強度 |
研究実績の概要 |
近年、森林土壌からの窒素溶脱による渓流水汚染が問題となっており、その原因に、森林管理放棄が考えられている。これまで森林管理の違いによって地下間隙水の硝酸態窒素濃度が異なることが報告されており、それに関与する微生物群集構造にも違いがある可能性が示唆されてきた。本研究では、間伐強度の異なるモデル人工林を用いて、異なる森林管理による土壌アンモニア酸化微生物の特性について解明することを目的とした。調査は、異なる間伐強度(無間伐区、弱度間伐区、強度間伐区)とし、各地点の土壌間隙水と表層5 cmの土壌を採取した。土壌間隙水では、溶存性窒素イオンを測定した。微生物は、各土壌試料のDNA抽出物からamoA遺伝子を標的としたアンモニア酸化細菌(AOB)、アンモニア酸化古細菌(AOA)の定量PCRおよびDGGE法によって解析した。その結果、土壌間隙水は、強度間伐区において、その他の区に比較して硝酸態窒素濃度が著しく低かった。定量PCRでは、春から夏にかけて強度間伐区ではAOB/AOA比がその他の区に比較して高い傾向が見られ、2012, 13-14年でも同様だった。よって、強度間伐区では、AOBが増加しやすい環境にあると考えられた。また、強度間伐区では、その他の区では見られないNitrosospira briensisに近縁な種が存在した。N. briensisは、AOBの中でもNitrosospira クラスター3bに分類され、高アンモニア濃度に適応して増殖し、高いアンモニア酸化を行うと知られることから、強度間伐区における土壌中へアンモニア供給量が高いことを示唆する。しかし、森林土壌間隙水のアンモニア、硝酸態窒素濃度は、強度間伐区において極めて低かった。これは、強度間伐区の森林土壌では、アンモニアが速やかに除去されていることを示唆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は、森の土壌の脱窒酵素の遺伝子まで解析する予定であったが、その前段階のアンモニア酸化細菌、および、古細菌の解析の中で、DGGE解析に、当初予定よりも時間がかかってしまったため、脱窒酵素の遺伝子の増減の動態解析まで行う事ができなかった。サンプルはあり、プライマー等も以前にも研究して持っているために、新年度に合わせて、実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に引き続き、季節別でのサンプリングを行い、アンモニア酸化微生物に加え、脱窒菌についても、脱窒酵素の遺伝子をターゲットとしたモニタリング手法によって、間伐強度の違いによって、土壌中にどのように分布しているのかを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度は、実際の分析は、当初の予定より、できなかったことがあったため、試薬類の購入が当初予定より少なくなった。また、学会に参加する予定であったが、結果が当初予定に比較して、不十分であったために、学会参加にも行っていないため、旅費等も使い切れなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
前回分で使用する予定であった、DNA抽出やPCR、realtimePCR、シーケンス解析に使用する試薬類の購入、また、学会参加による成果の発表、関連研究者らとのディスカッションのための出張などの旅費に使用する。
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