研究実績の概要 |
スギ人工林の森林管理の違いによる土壌微生物の違いについて調査研究を行ってきた。これまで調査してきた季節ごと、また、森林管理の違い(無間伐、弱度間伐、強度間伐区)で土壌を採取し、その微生物群集構造の中でも、特に、アンモニア酸化細菌とアンモニア酸化古細菌に注目し、その動態をみてきた。今年は、それに加え、脱窒を担う遺伝子のnosZ遺伝子に注目し、各土壌サンプルでその量と組成を調べた。その結果、2012年のサンプルでは、6月、8月、11月の深度5cmのサンプルにおいて、強度間伐区では、無間伐区に比較して、常に、nosZ遺伝子が多い傾向が見られた。2016年の6月においても、強度間伐区では、無間伐区に比較して,nosZ遺伝子の量が多かった。これらより、これまで、強度間伐区では、無間伐区に比較して、深度10cmの間隙水中の硝酸態窒素が低い理由の一つに、脱窒の能力が、強度間伐の方が、無間伐区より高い可能性が示された。さらに、これらの微生物群集構造について比較したところ、強度間伐区では、その他の区には観られない、根粒菌の脱窒遺伝子が含まれていた。この根粒菌は、ダイズ根粒菌で知られる、Bradyrhizobium japonicum USDA 110に近縁種であった。また、このBradyrhizobium japonicum USDA 110は、通常のダイズ根粒菌とは異なり、N2OをN2に変換できる種としても知られ、窒素循環において、強度間伐と無間伐では、異なる経路が働いている可能性も考えられた。また、このときの下草組成を調べたところ、下草の種にも、強度間伐でのみ、マメ科の植物が存在していた。このようなことから、土壌微生物の群集構造が、下草の種構成にも影響してることが考えられた。
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